第260章 輝かしい瞬間

「……」朝比奈初の淡々とした返事に、長谷川一樹の表情はさらに険しくなった。

彼女が薪を割る動作があまりにも手慣れているのを見て、一樹はもはやそこに目立つ邪魔者として留まる理由もなく、テーブルの上の野菜を手に取って洗い場へと向かった。

一方、斎藤央がまだ食材を持ち帰っていなかったため、三人の女性たちは簡単にかまどを組み立て、食器を洗い終えるとすぐに手持ち無沙汰になった。

朝比奈初たちのグループが料理を始めるのを見て、彼らはすでに羨ましく思い始めていた。

「まずいわ、お金が私のところにある」篠田佳子は休憩のために座ったばかりだったが、すぐに彼女たちのグループの予算が全て自分の手元にあることを思い出した。さっき央が急いで出かけたとき、誰も央に食材を買うための資金を渡すことを考えていなかった。

佳子が突然叫び声を上げると、佐伯莉子と張本詩織の視線が同時に彼女に向けられ、その表情には驚きと困惑が混じっていた。

詩織は少し焦って口を開いた。「どうしましょう?」

二人にそんな風に見られて、佳子は急に圧迫感を感じたのか、慌てて立ち上がり、「私が彼を探しに行きます」と言った。

この時、央はすでに野菜の収穫を終えていたが、支払いの段階になって初めて自分がお金を持っていないことに気づいた。

央は途方に暮れてその場に立ち尽くし、なかなか会計に進めずにいた。カメラが彼の正面を撮影しているのを見て、彼は無理に笑顔を作りながら言った。「どうしよう……さっき佳子姉さんにお金を貰うのを忘れちゃった」

彼は通信機器を持っておらず、佳子と連絡を取ることができなかった。

央はこのまま待っていても仕方ないと思った。しかも姉さんたちが自分のことを思い出してくれるかどうかも分からない。そこで彼は隣にいたスタッフに声をかけた。「お金持ってますか?少し貸してもらえませんか?」

スタッフは彼が可哀想に見えたのか、財布から100元の現金を取り出して央に渡した。

央は「ありがとうございます。戻ったらすぐにお返しします」と言った。

【かわいそう、一人で食材を探しに来たのに、お金も持ってないなんて】

【なんで私たちの央弟をこんな目に合わせるの?うぅ、彼はあんなに分別があって、みんなの足を引っ張ったりしないのに、あのお姉さんたちはもう少し彼に優しくできないの?】