カメラが長谷川一樹に切り替わると、そのまま離れることはなかった。配信を見ている視聴者たちは、一樹がメインシェフを務めて失敗しないか心配していた。
朝比奈初は今日使う薪を十分に割り終え、かまどに火を起こし始めた。
彼らはブタンバーナーを二台レンタルしていたが、ブタンの燃焼には時間制限があり、消費も早い。資源を節約するために、彼らはまだ薪を使って炊事をする必要があった。
屋外では地面で直接火を起こせないため、初はキャンプ場から焚き火台を持ち出し、比較的平らで風通しの良い場所に置いた。そして先ほど割った薪を台の上に置いた。
一樹は水を沸かし、鍋に麺を入れて茹で、柔らかくなったら取り出して冷水にさらし、均等に器に盛り付けた。最後に先ほど調合したタレをかけた。
「和え麺ができました。みんな、食べに来てください」
篠田佳織の焼き肉もほぼ焼き上がっていたが、食べ物があると聞いて、すぐに自分の担当の火を小さくした。一樹の和え麺を食べるためだった。
佳織が最初に歩いてくるのを見て、一樹は紳士的に箸を渡し、礼儀正しく言った。「お姉さん、どうぞ召し上がってみてください」
「ありがとう」佳織は麺の入った器を手に取り、箸でタレを均等に混ぜ、麺全体にネギ油が絡むまで混ぜてから、麺を箸で持ち上げて食べた。
一樹は横に立ち、期待を込めた眼差しで佳織の横顔をじっと見つめていた。同じように期待していたのは、数千万人の視聴者たちだった。
佳織が飲み込んだ後、一樹はゆっくりと尋ねた。「味はどうですか?」
佳織は顔を上げて彼を見つめ、すぐに一樹に親指を立てて褒めた。「ちょうど良い味付け。とても美味しいわ」
佳織の承認を得て、一樹の唇に薄い笑みが浮かんだ。
斎藤彩も遠慮せずに、ちょうどお腹が空いていたところだった。
先ほど一樹がタレを煮ているとき、彩は遠くからネギの香りを嗅ぎ取っていた。この香りだけで、彩は試してみることに決めた。
一樹はまだ横に立って、彩が食べるのを見ていた。何か意見を聞こうとしたとき、彩は自ら告げた。「悪くないわね」
彩も自分の麺を褒めているのを見て、一樹の顔の笑みはさらに深くなった。彼は謙虚に二人の先輩に言った。「これは初めて皆さんに麺を作ったんです」