「露は自然の水蒸気ですよ。農作物の成長にも良いのに、どうして子羊が食べたら下痢になるのでしょうか?」
斎藤彩がこんなことを言い出すとは意外だった。まるで彼女がこの分野に詳しいかのようだ。
しかし朝比奈初は彩の意見に完全に同意しなかった。彼女は以前に放牧の経験はなかったが、ある道理は理解しやすい。「農作物には消化器官がないでしょう。それを子羊と同列に語れるわけないじゃないですか。朝露は低層大気から形成されるものです。これは言うまでもないでしょう?中には空気中の不純物や様々な細菌、微生物が混ざっていて、とても不衛生なんです。」
「……」
【どんな理由であれ、今子羊の体調に異常が出ているのは事実だよね】
【朝露は酒造りやお茶に良いものだと思っている人も多いだろうけど、現在の環境汚染がエコシステムに与える影響や破壊を見落としがちだよね】
【なぜか突然ディベート大会を見ているような気分になった】
【朝比奈さんの言うとおり!露は植物の成長には役立つかもしれないけど、子羊は食べたものを胃腸で消化する必要があるんだよ】
【斎藤には少しは頭があるけど、たいしたことないね。この程度の知能で朝比奈さんと渡り合おうなんて】
朝比奈と彩の熱い議論を経て、番組スタッフは事態の深刻さを徐々に認識し始め、急いで牧場主に連絡して子羊たちの状態を確認してもらうことにした。
結局、これらの子羊は番組スタッフと地元の牧場主から借りたものだ。もし何か問題が起きれば、適切な賠償はさておき、オンラインの視聴者たちからネット上で非難されることは間違いない。
間もなく、牧場主が自宅から駆けつけた。自分の子羊のうち二匹がかなり衰弱し、下痢もひどい状態を見て、彼は心配そうな表情を浮かべた。
監督はやむを得ず画面に登場し、状況に介入した。「この二匹の羊はどうですか?深刻ですか?」
監督だけでなく、他の出演者たちも息をひそめて、自分たちが世話をしている子羊に大きな問題が起きていないことを祈っていた。
牧場主は手に懐中電灯を持ち、その光を二匹の子羊に当てながら注意深く観察し、眉をひそめて言った。「少し脱水症状が見られますね。」
彼らは草原で長年羊を飼育してきており、このような事態は珍しくなく、対処法もいくつか心得ていた。