第299章

前回二人で一緒に写真を撮ったのは役所だった。

これから朝比奈初と一緒に写真を撮ることを考えると、長谷川彰啓の感情が妙に複雑になってきた。

普段あまり写真を撮らないせいか、彰啓の表情や仕草はとても硬かった。彼は必死に自分をリラックスさせて落ち着いているように見せ、内心の不安を隠そうとした。

初は周囲を見回し、辺りを目で探していると、すぐに適任者を見つけた。

彼女は足早にその通行人に近づき、丁寧に声をかけた。「お姉さん、こんにちは。ちょっとお願いしてもいいですか?」

初に声をかけられた通行人は頷いて答えた。「いいですよ、何をお手伝いしましょうか?」

初は手で彰啓の方向を指さして言った。「あちらまで来ていただいて、私たちの写真を何枚か撮っていただけませんか?」

女性は初が指した方向を見て、自然と彰啓に視線が留まった。

その見覚えのあるシルエットを見て、女性の顔に笑みが浮かび、すぐに視線を戻して初を見つめた。「美人さん、あなたはあのイケメンくんの奥さんでしょう?」

彼女と彰啓の関係を通行人にそんなに正確に言い当てられて、初は少し驚いた。「そうですけど、どうしてわかったんですか?」

「さっきあっちであの人に会ったのよ。背が高くてハンサムで、まるで理想の男性みたい。」

女性は顔を上げて彰啓の方を見ながら、止まらずに褒め続けた。「あなたの旦那さん、すごくいい人よ。さっき女の子が二人、写真を撮ってほしいって頼んできたんだけど、彼は『妻のところに戻らないと』って言って、私にその二人の写真を撮るように頼んだの。で、どうなったと思う?」

女性がわざとそこで話を切ったのを見て、初も合わせて尋ねた。「……どうなったんですか?」

「あなたの旦那さんが行ってしまうと、その二人の女の子は私に撮ってもらうのをやめたのよ」女性は不満げに言った。「きっとあの子たちはあなたの旦那さんの顔に惹かれてたんでしょうね」

初「……」

「さあ、若いカップルの写真を撮りに行きましょう」

初はその女性と一緒に彰啓のところへ行った。彰啓を見ると、女性は親しげに声をかけた。「なんて偶然でしょう、イケメンくん、また会ったわね」

そして、女性はすぐにカメラマンモードに入って二人を指示し始めた。