第182章 誰に会いたい?

朝比奈初はカメラを避けて外に出てきた。そばに撮影スタッフはおらず、他の人たちは撮影テントで暖を取っている中、彼女だけが草原に降る雪を目にしていた。

彼女は手を空中に平らに伸ばし、二つの白い雪片を受け止めた。すぐに温かい掌の上で溶けてしまった。

牧場主は舞い散る雪を見て、顔に笑みを浮かべた。「毎年この時期になると、草原には初雪が降るんですよ。でも、ここ数年は雪が降り始める時期がどんどん遅くなってきているんです」

朝比奈初は言った。「じゃあ私はかなりラッキーですね、今年の初雪に出会えて」

一度も雪を見たことがなかった初にとって、今目の前で見ているにもかかわらず、それはまだ夢のような出来事だった。

彼女は手を引っ込めてポケットに入れようとした時、指先が携帯電話に触れた。そこで彼女は携帯を取り出し、無意識のうちに長谷川彰啓に電話をかけた。

電話をかけた瞬間、初は特に深く考えていなかった。時差のことも忘れ、彼が忙しいかどうか、電話に出る時間があるかどうかも忘れていた。頭が熱くなって、ただ純粋に誰かとこの瞬間を共有したかっただけだった。

彰啓は眠りにつく直前に、初から突然かかってきたビデオ通話を見た。

彼の目には気づかれにくい驚きの色が浮かび、眉が少し上がったが、表情に波風は立てなかった。携帯をじっと見つめ、その短い瞬間に何かを考えていたようだった。

しばらくして、彰啓はようやく初のビデオ通話に応答した。

ビデオ通話が繋がると、彼は携帯を視線と平行に持ち上げたが、最初に目に入ったのは暗い空と広大な草原だった。

彰啓が不思議に思っていると、初の声が聞こえてきた。「長谷川彰啓、こっちでも雪が降ってるの、見える?」

初は話しながらカメラを前面カメラに切り替え、笑顔を見せた。甘い笑みが口元に広がり、ほんの数秒の間に一瞬過ぎ去ったが、その人を惹きつける笑顔は彰啓の脳裏に深く刻まれた。

これは彼が初をこんなに嬉しそうに笑っているのを見た初めての瞬間だった。

続いて、初はカメラを元に戻し、携帯をゆっくりと一周させて、空一面に舞い散る雪の光景を彼と共有した。

彰啓は軽く「うん」と返事をし、少しかすれた声で言った。「見えるよ」

この初雪は大きくなく、舞い散る白い雪はまばらで、不規則に落ちては、すぐに草むらの中に消えていった。