第313章

「しばらくスマホを見てなかったら、電話もメールも来てて、びっくりしたよ……」江川航は自分で勝手に緊張していたが、結局何事もなかった。

江川のまだ落ち着かない様子を見て、周防隼人は思わず言った。「それのどこが大変なんだよ。初さんの方がよっぽど大変だぜ。ネット中から攻撃されてるんだから」

周防の言葉で、江川はようやく今回の炎上の主役が朝比奈初だったことを思い出した。

二人の視線がゆっくりと自分に向けられるのを感じ、初は冷静に口を開いた。「大丈夫よ。数日経てば話題も下火になるわ」

彼女の言葉は淡々としていて、表面上は気にしていないように見えたが、それがかえって長谷川彰啓の胸を痛めた。

結局、風当たりの強い立場に立たされているのは彼女、朝比奈初なのだから。

あのバラエティ番組に出始めてから、彼女は頻繁に話題になっていた。こういう状況に、初はもう慣れていた。

「長谷川さん、もしよかったら……」手伝いましょうか。

江川が彰啓を見上げ、後の三文字を言い終える前に、彰啓に遮られた——

「行こう」彰啓はスマホをさっとポケットに入れ、自然な動きで初の手を取った。

初は顔を傾げて彰啓を見た。「どこに行くの?」

二人が先に体育館を出て行くのを見て、周防は腕を組み、何とも言えない表情を浮かべた。彼は振り返って江川を見て、驚いたように言った。「いやいや、彼ってなんであんなに落ち着いてるんだ?」

江川は金縁の眼鏡をかけ、長い指でフレームを押し上げながら、余裕を持って答えた。「どこが落ち着いてるって?彼の行動の速さは誰よりも早いだろ」

……

午後のバドミントンで皆疲れていたが、夕食後の予定では温泉に行くことになっていた。

江川:「こんな遅くに温泉?じゃあ今夜は帰らないの?」

周防はため息をつき、提案した。「今夜は青葉市に泊まって、明日帰らない?マジで疲れたよ」

周防の熱心な勧めで、彼らはようやく今夜泊まることに同意した。

最終的な場所を話し合おうとしたとき、初は丁寧に割り込んだ。「皆さんで楽しんでください。私はパスします」

初が突然そう言ったので、彼らは午後の炎上が彼女に影響しているのかと思った。

周防:「やめないでよ、初さん。一緒に行こうよ。温泉でリラックスしようぜ」