第209章 800の心眼(4000字)_3

斎藤彩は彼女の言葉に一瞬言葉に詰まり、どう答えればいいのか分からなかった。

実際よく考えてみると、朝比奈初の言っていることも全く理由がないわけではないと思った。

前に夜に海に出た時、彼女は薄着だったが、朝比奈初は進んで上着を脱いで彼女に寒さをしのがせてくれた。

あの時、斎藤央は仕事の遅れで来られなかったが、彼女が食べた甘酢魚も朝比奈初が料理したものだった。それに、あの時彼らのグループが勝った火鍋も、初が彼女と分け合ってくれたものだった。

彩は性格的にプライドが高く、ある種の感情は隠そうとしなくても露わになってしまうタイプだった。

二人が茂みから出て村道に立ち、残りのタスクカードを探しに別れようとした時、彩は突然彼女を呼び止めた。「カード見つかった?」

彩が口を開いた瞬間、初は眉を少し上げ、彼女がこの件について自ら気にかけるなんて信じられないという様子だった。

初は体を横に向けて彼女を見つめ、平坦な声で言った。「二枚見つけたよ。どうしたの?」

「私はこれを持ってる」彩はポケットからタスクカードを取り出して初に渡し、無表情で言った。「まだタスクは解除されてないから、あなたが好きにして」

初はすぐには受け取らず、目を上げて好奇心を持って彩を見た。「なぜ私にくれるの?」

「あなたにタスクをやってもらうためよ」彩は何故か急に目を剥いて、強引にカードを初の手に押し込み、すぐに立ち去ろうとした。

「ちょっと待って」初は目を伏せ、カードの情報を急いで確認してから彼女を見た。「あなたが行くなら、まず私がタスクを完了させないと駄目でしょ?」

カードに書かれたタスクは同じグループのメンバーと握手することで、それをしないと記念カードがもらえず、全て無駄になってしまう。

彩は最初からこのタスクカードを見つけていたが、他のメンバーに連絡を取ることなく、ずっと外をうろついていた。先ほど謎の人物に出会うまで。

初はカードを手に持って彼女の前に歩み寄り、静かに言った。「握手してから行く?」

彩は2、3秒黙った後、ゆっくりと自分の手を差し出し、さらに言い訳を付け加えた。「家の鍵のためにあなたと握手するだけよ」

「同じよ」彼女も家の鍵のためだった。

【ツンデレな斎藤のお嬢さん、タスクカードを見つけても人に連絡しないなんて、チームワークの意識が低すぎるでしょ】