第319章

冷たい月光が地面に降り注ぎ、凛とした冷たい風が枝葉をサラサラと鳴らしていた。屋外の街灯と月明かりが交わり、真っ暗な庭全体を照らしていた。

この時、ダイニングルームの料理からは湯気が立ち上り、部屋中が温かく魅惑的な香りで満ちていた。

美味しそうに食べている人もいれば、味わうことなく食べている人もいた。

隣には時々となりに座っている女性に箸で料理を取り分ける人がいたが、相手の茶碗がほとんど減っていないことに気づいて、やっと何かがおかしいと感じた。

「お母さん、どうしたの?」斎藤央は秦野美月の元気がなく、暗い表情で、何か心配事があるような様子に気づき、思わず尋ねた。「料理が口に合わないの?」

美月はその言葉を聞いて、ようやく我に返り、顔を上げて央に微笑みかけ、何でもないふりをして口を開いた。「大丈夫よ、もうお腹いっぱいになりそうだから、気にしないで」

彼女は今朝の妊婦検診のことを考えていた。彼らに言うべきかどうか…

斎藤のお祖母様は普段からあまり食べる量が多くなく、すぐに箸を置き、軽くため息をついた。気分も少し憂鬱そうだった。「栄一が今日帰ってこないとわかっていたら、彩を呼んで食事させればよかったわ…」

斎藤栄一は外での接待があり、今夜は家に帰って食事をしなかった。

栄一の小言が耳元にないおかげで、央はようやく一度胃袋を満たすことができたが、結局彼だけが一番多く食べていた。

突然彩の話題が出て、央の表情にも少し変化が見られた。

彼はすでにかなり長い間、彩とちゃんと話をしていなかった。同じ番組に出ていても、基本的にほとんど交流がなかった。

実は彼は関係をそんなに硬直させようとは思っていなかった。ずっと彩が彼に対して様々な嫌悪感や中傷を示し、友好的になる機会を全く与えてくれなかったのだ。

前回、央が彩に会社を継ぐつもりはないと言ったのは本心からだった。おそらくその時から、彼は彩との誤解を解いて、和解したいと思っていた。

しばらく考えた後、央はゆっくりと口を開いた。「おばあちゃん、明日番組の収録に行くから、何か言いたいことがあれば僕に言って、彩に伝えるよ」

お祖母様は目に涙を浮かべ、罪悪感いっぱいに言った。「おばあちゃんは彩が恋しいって伝えて、時間があったらこのお婆さんに会いに帰ってきてほしいって」