第318章

朝比奈初は顔を上げ、眉と目に疑問と驚きの色を浮かべた。「あなた、何をしているの?」

「君が引き継いでくれって言ったんじゃないか?」長谷川彰啓は目を伏せて彼女と視線を合わせ、朝比奈初が理解に苦しむ様子を見て、困惑した様子で尋ねた。「どうしたの?」

「……」彼女の意図は竿を持ってほしいということだった。

誰が彼にそんな風に解釈させたのだろう!

初は彼のこの一連の行動に完全に言葉を失った。しかし、これまでの努力を無駄にしないため、また竿が揺れて水中の小魚を驚かせないようにするため、彼女はもう少し我慢することにした。

一方、長谷川家のお祖母様は二人が抱き合っている様子を見て、すぐに満足げな表情を浮かべた。

お祖母様は執事の方を向いて喜びを分かち合った。「見たかい?これこそが本番よ」

「はい、拝見しました」執事は頷いた。

お祖母様は得意げに言った。「どう?私の作戦は効果的でしょう?あなたも見習って、機会があれば息子さんに教えてあげなさい。いつか孫の顔が見られるかもしれないわよ」

執事は困惑した表情で返した。「……ええ、はい」

……

おそらく二人の距離が近すぎたせいで、初は彰啓の温かい息遣いを耳たぶの近くに感じることができた。それは意図的か無意識かは分からないが、彼女の髪の毛を揺らし、首筋にくすぐったい感覚をもたらした。

この距離から判断すると、初は彼が確実に頭を下げていることを知っていた。そして彼の顔が自分にとても近いことも。

そうでなければ、二人の身長差と、冬の少し冷たい空気の中で、こんなに熱い温度を感じるはずがない。

初はあえて動かなかった。一つには水中の魚を驚かせないためであり、もう一つは体が魔法にかかったかのように、動きたくても動けないような状態だったからだ。さらに奇妙なことに、彼女は体内に熱が広がっていくのを感じ、心拍数も速くなっているようだった。

どういうわけか、この一連の行動が初の生理的反応を引き起こしているようだった。

「……」これは緊張しているということなのか?

なぜ心臓が喉元まで飛び出しそうなのだろう?

昨日、紅葉の森でほぼ顔と顔をくっつけて写真を撮った時でさえ、こんなに明らかな反応はなかったのに……もしかして彼女の首が敏感すぎるのだろうか?