朝比奈初は立体的な顔立ちと冷たい白い肌色を持ち、普段はすっぴんでもとても清潔で、少し冷たい雰囲気を漂わせていた。彼女がメイクをするのは、ただ少し血色を良く見せるためだった。
おそらく長谷川彰啓でさえ、初がメイクをして外出するとは思っていなかったので、思わず彼女を何度も見てしまったのだろう。
初は背筋を伸ばし、彼の方を横目で見て、小さな声で少し不満げに言った。「あなたの顔を立てるためよ」
そうでなければ...彼女はそんな面倒なことをする気なんてなかった!
気まずい雰囲気を避けるため、初は積極的に話題を振った。「これから誰に会うの?」
「会社の株主たちに会いに行く」
初は考え深げに頷き、しばらくしてからまた尋ねた。「私、彼らに手土産を用意した方がいい?」
初めて会うのだから、何かすべきかと思って。
彰啓は「必要ない、ただの食事だから」と言った。
「じゃあ、誰がいるか教えて?事前に把握しておきたいの」
彰啓はいくつか重要で見分けやすい年配者を挙げた。「背が低くて太り気味で、おしゃべりなのが夏目会長。白髪が多くて、タバコが好きなのが奥村会長...夏目会長はよく場を盛り上げようとして、発言も直接的だから、何を言われても聞き流せばいい。それから父さんと江川もいる」
「山口秘書が前に、あなたが就任したばかりの頃、役員たちによく冷や水を浴びせられたって言ってたけど、その夏目会長が仕切ってたの?」
初は突然、入院していた頃に山口秘書がこのことについて愚痴っていたのを思い出した。だから彰啓が特にこの夏目会長について言及した時、彼女はすぐに思い当たった。
彰啓は落ち着いて答えた。「当時は私が入社したばかりで、彼が疑問を持つのは当然だった」
当時は誰も彰啓の本当の価値と能力を見ていなかったので、彼を信用しないのは極めて普通のことだった。
初は目を伏せ、「場を盛り上げるのが好き...」とつぶやいた。
そのとき、彰啓の手が突然伸びてきて彼女の指と絡み合い、軽く握った。「緊張しなくていい、俺がいるから」
——
30分後、初と彰啓は個室に到着した。
ドアを開けるとすぐに、中から朗らかな笑い声が聞こえてきた。