第340章

本来彼らは朝比奈初のために場を取り繕おうとして、お茶が飲めないなら果汁に変えようと思っていたのに、朝比奈初が白湯と言うのを聞いてしまった!

「……」これには、誰も言葉を継げなかった。

長谷川彰啓は顔を横に向けて朝比奈初を見た。目の奥に一瞬の驚きが走り、眉をわずかに寄せて、まるで今聞いた答えを信じられないかのように、疑問を口にした。「白湯?」

彼はまるで視線で初に情報を伝えようとしているようだった:本当にそれでいいの?

朝比奈初は長谷川彰啓と視線を交わし、他の人を避けることなく、普通の声量で全員に伝えた。「何か問題でも?」

彰啓は「……」

彼はもちろん問題ないが、ただこうすることで席にいる人たちの不満を買うのではないかと心配していた。

部屋にはまだ料理を運んでいるウェイトレスがいて、客たちが沈黙したのを察知し、無意識に手の中の料理を静かに置き、音を立てる勇気がなかった。

江川航は雰囲気がおかしいのを見て、笑いながら急いで言った。「白湯はいいですね……体も胃も心も温まる!」

「うん、白湯は悪くない」長谷川権は長い間黙って観察していたが、ようやく口を開き、夏目会長に視線を送った。「夏目」

長谷川権が発言した以上、この面子は立てざるを得なかった。

夏目会長は顔を曇らせ、大きく手を振って、ウェイトレスを見上げた。「酒を下げて、白湯に変えなさい」

ウェイトレスはまだ先ほどの場面に浸っていたようで、すぐには反応できず、酒を下げるという言葉を聞いてようやく我に返った。「……かしこまりました、少々お待ちください」

二人のウェイトレスが前後して個室を出ると、廊下で思わず小声で話し始めた:

「初めて見たわ、接待に来た社長たちが酒を白湯に変えることに同意するなんて……」

もう一人のウェイトレスが言った。「冗談でしょ……あれは朝比奈初よ!」酒を白湯に変えるよう提案できるのは、朝比奈初しかいないだろう。

「彼女の度胸すごすぎ。あんなに大勢の前で酒を断るだけじゃなくて、他の人に酒をやめさせるなんて、私、彼女にぞっこんよ」

「朝比奈さんは酒席文化を正しに来たんじゃない?」

……

個室内では、先ほどの気まずい場面を乗り越え、ようやく平静を取り戻した。