朝比奈初は奥村会長に他人を尊重する意識がないのを見て、彼が本当に分からないのか、それとも知らないふりをしているのかを気にせず、はっきりと本音を言った。
「……」奥村会長は朝比奈初の言葉を聞いて、表情がやや硬くなった。
夏目会長はこの時、不謹慎にも笑った。
さっき夏目会長の件で、奥村会長はまだ初のために弁護していたのに、思いがけずこんなに早く彼の番が回ってきたのだ。
奥村は目を上げて初を見つめ、顔に無理な笑みを浮かべ、しばらくしてようやく一言絞り出した。「わがまま娘だな。」
言い終わると、彼は自ら火をつけるのをやめ、万般やむを得ないという様子で笑った。「タバコを吸わせないなんて、私の娘とよく似ているな……わかった、今夜はタバコを吸わないでおこう。」
奥村会長は大人しくタバコを置き、ライターも夏目会長に返した。
初はそれを見て、目に満足の色が浮かび、再び礼儀正しく口を開いた。「奥村のおじ様、私に顔を立ててくださってありがとうございます。」
誰かが尋ねた。「本当に吸わないの?我慢できる?」
「なるべく。」我慢するしかない、どうしても無理なら外に出て吸えばいいだろう?
奥村会長をよく知る人は皆知っている、彼は重度の喫煙者で、一日タバコを吸わないと体中が不快になるのだ!
この食事と会話の時間は、少なくとも1、2時間は続くだろう。奥村会長にとっては本当に極限の挑戦かもしれない。
誰が想像できただろうか、朝比奈初のたった一言で、彼が本当に素直にタバコを置くとは。
部屋には初の他にも女性の株主がいた。奥村が本当にタバコを置くのを見て、彼女は思わず声を上げた。「奥村、実はあなたがタバコを手放さない悪い癖をずっと見ていられなかったのよ。あなたと知り合って何年も経つけど、言い出す勇気がなかったわ。」
この言葉が出ると、夏目会長も自分に当てはまると感じずにはいられなかった。結局、彼もタバコを吸うことが少なくなかったのだから。
夏目は眉をひそめて尋ねた。「君は私にも同じことを言いたかったんじゃないか?」
「そうよ。毎回あなたたちと一緒にいると、私の体中がタバコ臭くなるの。今夜も長谷川若社長のためでなければ、絶対来なかったわよ。」
「……」
仕事が終わった時間なので、皆は仕事の話をしたくなかった。そこで彼らは長谷川彰啓と朝比奈初について話題を探し始めた。