第342章

長谷川彰啓から見れば、朝比奈初は運だけで成功した女の子ではなく、自分の努力で一歩一歩歩んできた人だった。

彼女は賢く、優しく、そして強い。さらに自信と親しみやすさを兼ね備えている。

そんな彼女は人格的な魅力に溢れていて、好きにならないはずがない!

「……」朝比奈初の家庭環境を知り、皆は信じられない思いだった。長谷川家の長男の妻が農家出身だなんて、誰が想像できただろうか。

しかし、長谷川家が気にしていないのなら、部外者の彼らがとやかく言う資格はない。

しばらくして、誰かが率先して氷を砕いた。「今は恋愛自由の時代だからね。私たちの時代とは違うよ」

奥村会長も流れに乗って話を続けた。「確かにね、時代が変わったよ。昔は私と妻は知人の紹介で出会ったんだ」

「私と妻が付き合い始めた頃は、私はまだ無一文の若造だったよ!」

話題はいつの間にか自由恋愛に移り、皆で昔の思い出を語り合うことになった。あれこれと話しているうちに、この件はすぐに過ぎ去った。

この時、生放送の現場のゲストたちも一緒に鍋を食べ始めていた。

佐伯莉子は朝比奈初が部屋にいないことに気づき、時間になっても鍋を食べに降りてこないので、好奇心から尋ねた。「あれ?朝比奈さんはどこに行ったの?」

莉子の質問を聞いて、篠田佳織はちょうど知っていたので何気なく答えた。「彼女は出かけたわ」

「こんな遅くにどこへ?」

佳織は首を振った。「わからないわ」

莉子は肉を鍋に入れながら、しばらくしてからまた好奇心から尋ねた。「朝比奈さんのために料理を残しておいた方がいい?」

「必要ないよ」長谷川一樹はキッチンから鍋のタレを持ってきて、ちょうど彼らが朝比奈初について話しているのを聞いて、思わず口を挟んだ。「彼女は多分僕たちより良いものを食べてるよ」

莉子は眉を上げて言った。「……そう」

【一樹の言い方を聞くと……なんか彼が何か知ってる気がする?もしかして朝比奈さんが誰と食事してるか知ってるの?】

【どうやって朝比奈さんがあなたたちより良いものを食べてるって知ったの?詳しく教えてくれない?私と友達はすごく聞きたいんだけど!】

【朝比奈さんがいないと、楽しさが半減する!!】

【当てずっぽうだけど、もしかして旦那さんが帰ってきたとか?】