第248章 好奇

斎藤彩の言葉が落ちると、その場にいた全員が急に静かになった。

斎藤栄一は彩が突然株式の話を持ち出すとは思っていなかったようで、顔色を変え、彩を見上げて傲慢な表情を浮かべた。「お前がそんなものに興味があるとは思わなかったよ」

彼と前妻は二人で一から事業を始め、会社も共同で経営してきたのだ。

当時、栄一は無一文で、彼の起業資金はほとんど前妻が出したものだった。

その後、彩の母が彼女を産んでから、体調が悪化し始め、会社の事は全て栄一に任せるようになった。

認めざるを得ないが、栄一は確かに商才があり、わずか3年で会社の規模を拡大し、無事に上場させた。彼の実力は疑う余地がないが、会社の大部分は彩の母方の人間たちだった。

彩は現在、会社での役職はないものの、母親の株式継承権を持っており、会社での発言権は栄一に次ぐものだった。そして彩が会社に入る気になれば、他の株主たちも全力で彼女を補佐するだろう。

彩は負けじと返した。「あなた誰?そう思ったって?」

残念ながら、長年経った今でも、その株式譲渡書は依然として栄一の手元にあり、彩は何度も自分のものを取り戻そうとしたが、この老狐は手ごわかった。

株式の話になると、栄一は再び自分の原則と要求を強調した。「あれはお前の母さんがお前に残した持参金だ。お前が嫁ぐ日に、当然渡すつもりだよ」

この言葉を彩は何度聞いたかわからないが、彼女はずっと我が道を行き、株式継承権を手に入れるために結婚することはなかった。

ここまで話が進むと、栄一は余計な一言を言わずにはいられなかった。「もう30歳なんだから、早く誰かに嫁いだらどうだ。年を取ってから結婚して子供を産むと、大変なことになるぞ」

「そんなことで私を脅さないでよ。私が結婚するかしないかはあなたに何の関係があるの?」彩は両手を胸の前で組み、椅子に背を預け、遠慮なく言った。「それらは遅かれ早かれ私のものよ。今あなたが握りしめていたいなら、そうすればいいわ。あなたがいつか死んでも、それを持って土に入れるとは思えないわ」