第302章

この時、江川航はすでに市内にいて、約束していた友人たちと会ったところだった。

長谷川彰啓がいないことに気づき、周防隼人は江川航の方を向いて尋ねた。「長谷川はどうした?朝、迎えに行かなかったのか?」

航は少し眉を上げ、無関心そうに答えた。「行ったよ、でも彼は俺と一緒に来なかった」

「どういうことだ?」

「朝早くから奥さんと出かけたんだよ」航は目を上げて彼を見つめ、少し嫌味な口調で言った。「お前みたいに、嫁もいないのに昼過ぎまで寝てるわけじゃないんだよ」

隼人の表情が曇り、声も真剣になった。「航、そんな風にいじめるなよ。せっかくの休みなんだから、少し遅く起きたっていいだろ?」

そのとき突然、航は朝比奈初からのメッセージを受け取った。

朝比奈初:【航さん、そちらの住所を教えてもらえませんか?私たち今からそちらに行きたいんですけど】

航はすぐに初に住所を送り、そして友人たちに伝えた。「彰啓夫妻がこれから来るよ」

「え?彼らが来るの?」

「みんな青葉市にいるのに、なんでわざわざ別行動なんだ?」

航は無理に笑みを浮かべて言った。「実は言い忘れてたんだけど、実は義理の妹が青葉市で用事があって、彰啓がここに場所を決めたんだ」

「……」

初は航からの返信を受け取ると、すぐにまた尋ねた。【みなさんもう食事しましたか?】

航:【まだだよ、一緒に食べない?】

初:【ψ(`∇´)ψそれを待ってました】

航:【じゃあ、後でレストランの住所を送るね】

チャットを終えると、初は彰啓に向き直って言った。「市内の方向に向かいましょう。航さんが後で新しい住所を送ってくれるって。ここから高速に乗って、約1時間で着くはずです」

——

昼の下校の鐘が鳴り、生徒たちは笑い声を上げながら教室を出ていった。

長谷川千怜はカバンを背負って通りを歩き、すぐにマンションに戻った。エレベーターを降りて廊下を歩いていると、隣の部屋のドアが開くところに出くわした。

彼女は数日前に隣に新しい住人が引っ越してきたことを知っていたが、誰が住んでいるのか興味はなかった。学生の彼女は社交的なことをする気もなかったが、今日は隣人がドアを開ける瞬間を見ることになった。