第三百三十章

この手は長谷川一樹には通用しなかった。

棚には「大特価」と表示され、2本のオイルの価格も確かに単価よりもお得に見えたが、実際にはこれは一種の抱き合わせ販売行為であり、その効果は顧客の価格判断を妨げ、消費欲を刺激することだった。

よく考えれば、セール対象の商品のほとんどは売上を伸ばすためか、商品の滞留を防ぐためのどちらかであり、このような大規模で商品も多いスーパーマーケットではたいてい後者だ。

他の人々が期間限定の特価商品を争って買い求める中、一樹だけは消費に関して冷静さを保ち、スマホの電子リストに従って必要なものを揃え、その後生鮮食品コーナーで朝比奈初と合流した。

この時、初はちょうど冷蔵肉を選んでいた。

一樹が満載のショッピングカートを押して来るのを見て、初は興味深そうに尋ねた。「何を買ったの?」

一樹は購入したものを彼女に列挙した。「お米、食用油、食器と調理器具、食器用洗剤、それから洗濯洗剤…」

初は彼のカートを一通り見回し、突然予想外の商品を発見した。「どうしてロボット掃除機まで買ったの?」

今回の番組収録では一見家具が揃っているように見えても、実際には多くのものが不足していた。例えば、キッチンにはガスコンロはあるが鍋がなく、様々なキッチンツールも自分で用意する必要があった。

初はもともと鍋を買って帰るだけでも大げさだと思っていたが、数日の番組収録のためにロボット掃除機まで買うとは思わなかった。

「…じゃあ戻してきて、ほうきに変えようか?」彼はグループチャットの会話に基づいて買い物をしていた。彼らは掃除道具が必要だと言っただけで、一樹は自分の考えでスマート掃除機を買ったのだ。

「いいよ、このままで。あとで転売すればいいから」初は視線を冷凍ケースに戻した。

一樹は彼女が手に何箱もの肉を持っているのを見て、眉をひそめ、疑問に思って尋ねた。「そんなに食材買って、全部食べきれるの?」

「今夜は鍋パーティーでしょ?たくさん買わないと」

今夜鍋が食べられると聞いて、一樹はすぐに自分が食べたいものをリクエストした。「じゃあ牛肉団子を一袋と、カニ肉と牛しゃぶも…」

「佳織さんは牛肉を食べないみたいだから、少なめに買って、他のものも見てみようか」

初の説明を聞いて、一樹はすぐに妥協した。「わかった」