朝比奈初はスタッフから救急箱を借りて斎藤央の傷の手当てをした。
「央くん、手を下に下ろして、傷口を押さえないで」
「はい」央は傷口から手を離し、下の方に移動させて、指の両側をしっかりと押さえた。すぐに止血効果が現れた。
「しっかり押さえてね、まず傷口を拭いておくから」初は救急箱を開け、まず綿球で傷口の周りを拭き取り、次に綿棒にヨードチンキをつけて消毒した。
ヨードチンキをつけた綿棒が傷口に触れると、冷たく感じ、傷口に染み込んで刺すような痛みが走り、央は思わず眉をひそめた。
初は彼の傷口が少し大きく、絆創膏では完全に覆えないことに気づき、ガーゼで包帯を巻いた。
【朝比奈さんの反応を見ていると、央くんが誰の弟なのかわからなくなるね】
【正直言って、朝比奈さんは本当に良いお姉さんだよね。央くんとそんなに年齢差がないのに、救急箱を持ってきて包帯を巻いてあげるなんて、すごく温かくて安心感があるよ!】
【あーもう嫉妬する!!なんで怪我したのが私じゃないの、私も朝比奈さんに包帯巻いてほしい】
【みんな冷たい目で見てるだけって、冷たすぎない?手伝いに行くくらいどうってことないでしょ?央くんがお金をたかるとでも思ってるの?】
「はい、できたよ」包帯を巻き終えると、初は優しく注意を促した。「この数日は気をつけて、傷口を水に濡らさないようにね」
央はずっと下を向いて包帯を巻いた指を見ていたが、顔を上げて初を見た時、ふと我を忘れたような表情になった。
さっきは緊急事態で、注意が自分の傷に集中していたため、誰が傷の手当てをしてくれているのかあまり気にしていなかった。
今、それが初だと分かり、彼は本当に意外に思い、目に感動の色を浮かべながら、心のこもった声で言った。「ありがとう、朝比奈さん」
「大丈夫よ」初は救急箱を閉じて傍らのスタッフに返し、振り返って央を一瞥して淡々と言った。「リビングで休んでいて。ここは私に任せて」
彼らの邪魔にならないよう、央は数秒迷った後、初に譲歩した。「じゃあ、お願いします」
央がキッチンを出ると、すぐにリビングで斎藤彩と出くわした。
「怪我したの?」央の指にガーゼが巻かれているのを見て、彩は表情に喜怒を表さなかった。