箱の中にはネックレスが入っていた。ペンダントは透かし彫りの小さな丸い玉で、中には宝石のようなものが入っており、どの角度から見ても高貴な輝きを放っていた。ペンダントを中心に二匹の小さな龍の彫刻が繋がっており、細部まで完璧に仕上げられていて、このネックレスが並のものではないことが一目で分かった。
田中純希は慎重にネックレスを鑑賞しながら、渡辺健太に尋ねた。「このネックレス、高価なものでしょう?」
健太は彼女の細い腰に腕を回し、言った。「これは母が渡辺奥さんに贈るものだよ。家宝なんだ」
純希は手が滑り、ネックレスがベッドの上に落ちた。彼女は慌てて、そっと拾い上げた。「渡辺家の家宝なんて、それこそ値段がつけられないほど高価なものじゃない?」思わず箱の中の柔らかい布でネックレスを二度拭き、丁寧に箱に戻した。
健太は低く笑い、訂正した。「奥さん、言い方が違うよ。渡辺家の家宝じゃなくて、私たちの家の家宝だよ。今はあなたに託したんだ。明日の夜、このネックレスをつけて本家に食事に行こう。これはあなたの身分の象徴なんだ」
純希は感動した。「お母様がこんなに私に良くしてくださるなんて思いもしなかった。こんな大切なものを私に託してくださるなんて。明日必ず着けていくわ。でも、その後はあなたの金庫にしまっておいた方がいいと思う。安全のために」
そう言って彼女は箱を枕の下に滑り込ませ、安心したように枕を二度叩いた。とても大切そうな様子だった。
健太は自分の妻がこんなに可愛らしいのを見て、思わず彼女を抱きしめて言った。「奥さん、数日後にもう一本買ってあげるよ」
純希は言った。「別に必ずプレゼントしてほしいわけじゃないけど、でももしくれるなら嬉しいわ」彼女の夫もなかなか気が利くと思った。
純希がベッドに横になると、健太は電気を消して横になった。彼女は自然と彼の腕の中に潜り込み、健太は彼女の額にキスをした。「明日は会社に行かなきゃならないけど、なるべく早く帰ってきて一緒に行くよ」
純希は彼を思いやって言った。「あなたは忙しいでしょうから、私一人で行っても大丈夫よ」
「さすが若奥様だね。気品があって、好きだよ」
純希はくすくす笑って、「ちゃんと振る舞うわ。間違ったことをしないように頑張るわ」
「間違えても大丈夫。夫が守ってあげるから」