第104章 星を摘む

田中純希と渡辺健太が家に帰ったのは深夜だった。麗さんが玄関で彼らを待っていた。

麗さんは純希の荷物を持ちながら言った。「旦那様と七の大叔父様がお戻りになりました。お義母様は昨日、大きなお屋敷の方に引っ越されて一緒に住まれることになり、加藤さんも一緒に行かれました。お義母様は若奥様に今夜はゆっくり休んで、明日の夜に大きなお屋敷で食事をして、家の長老たちに会うようにとおっしゃっていました。」

「わかりました」と純希は尋ねた。「明日の夜は何時頃ですか？」彼女はまだ渡辺家の古い屋敷に行ったことがなかった。

「7時頃です。だいたい4時にスタイリストが来て、メイクのお手伝いをします。若奥様は明日はお仕事に行かれないのでしょう？」

そうするしかないようだ。

純希は健太に先に部屋に戻るよう言い、彼女は渡辺修一の部屋を見に行った。

修一は眠っていた。手には純希がプレゼントしたイルカのぬいぐるみを抱えていて、まるで眠れる王子様のようだった。

純希がぬいぐるみをあげた時、小さな坊ちゃんは非常に嫌がっていた。彼は小さな眉をひそめて言った。「これは女の子が遊ぶものじゃないか、僕はいらない。」

純希は言った。「これは私の一番好きなぬいぐるみなの。一番好きなものをあなたにあげたのよ。本当にいらない？」

小さな坊ちゃんはようやく渋々受け入れた。「じゃあ、いいよ。」

純希はさらに言った。「小さなイルカを抱いて、写真を撮らせて。」

修一は驚いて部屋中を走り回った。「いやだ、そんなバカみたいな写真なんて撮らないぞ！」

使用人たちは笑いが止まらなかった。若奥様が嫁いできてから、小さな坊ちゃんはますます子供らしくなった。以前はいつも大人のふりをしていたのに、今は笑い声が増えて、見ていてとても愛らしい。

修一は口では小さなイルカが好きではないと言っていたが、夜寝るときはいつも小さなイルカを抱いていないと眠れなかった。

純希の顔には優しい笑みが浮かんでいた。この子はいつも本心と違うことを言う、お義母様と同じ性格だ。

彼女は修一の小さな頭を撫でると、少し汗ばんでいた。立ち上がってハンカチを洗い、修一の顔と手を拭いてから、彼の小さな頬にキスをして出て行った。