第329章 あなたは同性愛者を差別している

渡辺修二の言葉に横田文人は恐怖で震えた。彼は自由に動かせる唯一の手で胸を押さえ、「小僧、脅かさないでくれ。お前の叔母さん、あの魔女が俺を好きだって？あはははは、俺が好きなのは男だ……」

田中純希は一粒のブドウを横田文人の口に放り込んだ。「子供の前でそんな話をするな」子供はまだ小さいのに、どうやって修二に同性愛の存在を説明すればいいのだろう。

彼女は同性愛者を差別しているわけではない、ただ受け入れるのが少し難しいだけだ。

横田はほとんど窒息しそうになった。「純希、お前は前はこんなじゃなかった。乱暴になったな」

渡辺修一は伯父さんを見て、それからママを見た。「伯父さん、男性が好きだって言いたかったの？」

横田の口からブドウが飛び出した。「お、お前この小僧…」この子は知りすぎている！

修一はクールに言った。「僕には名前があるよ。渡辺修一だ！」

純希は冷静でいられなくなった。「修一、どうしてあの…同性愛のことを知ってるの？」

修一はごく普通の様子で答えた。「アメリカの街で二人の男性が一緒にキスしているのを見たよ。ジェニーが彼らは同性愛者だって言ってた。それは男性が男性を好きになるってことだよ」

純希の頭の中で雷が鳴った。彼女は修一の小さな頬を両手で包み込んだ。「修一、まさかあんな風潮に影響されて、あ、あれになったりしないよね…」

修一は瞬きをした。「どれ？」

純希は慌てた。どうしよう、どうやって子供に教えればいいの？彼女は以前、子供にこういった問題を正すことなど考えたこともなかった！

横田は不満そうに鼻を鳴らした。「田中純希、お前は俺を差別してるな」

「あなたを差別なんてしてないわ」純希は彼と話す気分ではなくなった。「ゆっくり休んで。私は子供を連れて帰るわ」

横田は彼女を行かせまいとした。「俺の問題がまだ解決してないのに帰るのか？」

「何の問題？あなたはまだ元気そうに見えるけど」

横田は自分の病衣を開いた。「俺の傷を見てくれ。渡辺千景が病院に来るたびに俺を苦しめる。傷口が開いてしまうんだ。退院までに命がもつか心配だ！」

純希は横田の傷口から血が滲んでいるのを見た。傷はかなり酷いものだった。

「私にはどうしようもないわ。渡辺嬢様をコントロールできないもの」