樹仙様、いい加減にしてください！

　　私、陳曦（チン・シー）。字（あざな）は虚坤（きょこん）。



　　異世界で「ゆるふわな隠居生活」を送ることを夢見ていた転移者である。



　　だが現実は甘くなかった。スタートから極貧生活。



　　唯一の「初心者特典」は、隣の祭壇にいらっしゃる、気まぐれで奇妙な趣味を持つ、私の純陽の精気を常に狙う美豔な蛇仙様だったのだ！



　　私の日常はこうだ。



　　「蛇仙様、お願いですから、今日は少しお控えいただけませんか？最近、腰が痛くて……それに、符を描いたり、紙人形を作ったり、雷法を研究したりと、忙しいんです！」



　　それに加えて、ことあるごとに【潜伏経験値＋１】、【トイレ休憩経験値＋１】といった、不真面目なシステムが、いつも変な場所で私を強くする。



　　この魑魅魍魎（ちみもうりょう）が雑草のごとく跋扈（ばっこ）する世界で、私は蛇仙様の「特別なお世話」に怯えながら、システムの鞭撻（べんたつ）によって半ば強制的にレベルアップさせられているのだ。



　　その結果、村の単純な少年は私の忠実な舎弟（しゃてい）となり、街の金持ちの御曹司（おんぞうし）は泣きながら私と義兄弟の契りを結びたいと叫び、さらには高慢な県令（けんれい）の令嬢まで、私を見る目が日ごとに怪しくなってきた……



　　はぁ……私の望んだ平凡な人生はどこへ行った！？



　　こんなに面倒くさくなっていくだなんて！私はただ静かに蛇仙様に「お供え物」を捧げたいだけなのに！