第25章 彼は彼女に一目惚れした？

須藤夏子はパシホテルを出た後、そのまま須藤家に戻った。

リビングで、須藤明良が夏子の行方について尋ねるべきか迷っていたところに、夏子自身が明良の前に現れ、怒りを込めて言った。「お父さん、あなたの言う解決策が深井杏奈に私の代わりにお金を返させることなら、私は自分の力で何とかします！」

明良は驚き、急いで手に持っていた新聞を置いて尋ねた。「どこでそんな話を聞いたんだ？」

夏子は当然、杏奈が「直接」彼女に話したとは言わず、「西園寺若様から電話がありました！」と答えた。

明良は事態が悪化したことを悟り、急いで説明した。「杏奈はちょうど西園寺若様と知り合いだったから、杏奈に頼んで話をしてもらおうと思ったんだ。結局、四百万円は小さな金額じゃないからね。」

「一生かかっても返せなくても、杏奈に頼るつもりはありません。杏奈に恩を売られるのはもっと嫌です。この件はもう関わらないでください。私が自分で解決します！」言い終えると、夏子は振り返ることなく階段を上がっていった。

明良は彼女の決然とした背中を見つめ、その目は暗く不明瞭だった。夏子が部屋に戻ると、彼はすぐに杏奈に電話をかけた。

「杏奈、西園寺若様に会いに行ったのか？」

深井杏奈はちょうど明良とこの件について話そうと思っていたところだった。「行きました。でも西園寺真司は私の顔を立ててくれませんでした。今日試してみましたが、真司は私たちの秘密を知りません。彼は二ヶ月前に空港で夏子と知り合ったと言っていました。私は既に調査させましたが、真司は確かに二ヶ月前に夏子と同じ便に乗っていました。」

「それなら問題ないということか？」

「いいえ！問題はもっと深刻です！今日、真司は私に夏子に一目惚れしたと言いました！」

明良も事態の難しさを感じ、眉をより深く寄せて尋ねた。「どうしてこんなことに？彼の言葉はどこまで本当なんだ？」

「嘘には見えませんでした。それに真司は夏子が以前石川城太の彼女だったことを知っています。真司という人は、城太が好きなものに手を出すのが大好きなんです。夏子への興味も、一部はそこから来ているのではないかと思います。」

「つまり、真司は本当に夏子に惚れたわけではなく、単に興味を持っているだけということか。」