須藤夏子は少女を自分の部屋に泊めることにし、生活用品をいくつか渡した後、先にお風呂に入るよう促した。
少女は全く人見知りせず、自分のスーツケースを開けて寝間着を選び始めた。
夏子は彼女のスーツケースの中身を見て、思わず舌打ちした。
やはり見間違いではなかった。この少女は普通の家庭の出ではない。スーツケースの中の服は全て最高級ブランド品で、どれか一つでも夏子の数ヶ月分の給料に相当する。ましてや、無造作に放り込まれたアクセサリー類はなおさらだ。
「貴重品はちゃんと片付けておきなさい。なくなっても知らないわよ」
少女は不思議そうに自分のスーツケースを見て、しゃがんだまま振り返って尋ねた。「貴重品ってありましたっけ?」
夏子「……」
なるほど、お金持ちの家の子供の目には、これらはただの日用品に過ぎないのだろう。
二人がお風呂を済ませた後、少女はまた眠くなり、ベッドに上がってすぐに寝ようとした。夏子はこの子の神経の太さに呆れながらも、彼女を引っ張り起こして言った。「先に家族に連絡しておきなさい」
「でも電話番号覚えてないんです」
「他の連絡方法でもいいでしょ。チャットアプリとかSNSとか会社の電話でも。そうしないと家族が心配するわよ」
少女は少し考えて、確かにそうだと思ったようで、「じゃあ、携帯貸してください。チャットアプリで兄に連絡します」と言った。
夏子が携帯を渡すと、少女はチャットを始め、かなり長い時間話し込んでいた。
「どう?連絡取れた?」
「うん、兄に話したら、午後に急な出張が入って、三日後に戻ってくるって。自分でホテルを見つけて泊まっていてって言われたけど、私はお姉さんの家に泊めてもらってると伝えて、住所も教えたの。兄はここで待っていなさいって、三日後に迎えに来るって」
「……」夏子は「つまり、ここに三日間泊まるつもり?」と尋ねた。
少女は夏子が自分を追い出そうとしていると感じ、また哀れっぽい表情を浮かべて言った。「お姉さん、私の財布盗まれちゃって、銀行カードもクレジットカードもないの。ホテル代払えないよ」
夏子は彼女の視線に鳥肌が立ったが、自分でさえもこの家にはもう居られないのに、見知らぬ人を住まわせるわけにはいかない。「お金をあげるから、ホテルに泊まりなさい。私も明日家を出るの」