医者が須藤夏子を再度診察した後、大きな問題はなく、数日間しっかり休養すれば良いと確認された。
夏子は薬を飲んだ後、再び朦朧とした状態で数時間眠り、気がつけばもう昼になっていた。
陸橋天音は一日中我慢していたが、ついに耐えきれずに夏子を見に来た。夏子が目を開けると、すぐにえくぼのある拡大された顔が見え、思わず笑みがこぼれた。
「お姉さん、やっと起きたんだね」
「うん」夏子は淡々と答えただけで、天音に何も質問しなかった。
実は昨日の出来事で、彼女はほぼ天音の身分を知っていた。彼女は西園寺真司の妹で、実の妹ではないものの、二人の仲は良さそうだった。あの日彼女が言っていた「お嫂さんを探している」というのは、十中八九嘘だったのだろう……
天音は夏子が起き上がろうとするのを見て、すぐに自分の部屋に走り、スーツケースから服を二着引っ張り出して夏子に渡し、言った。「お姉さん、昨日着ていた服は兄さんが全部捨てちゃったから、とりあえず私の服を着てよ。下着は新品だから。あなたも私と同じぺったんこだから、きっと合うわ」
「……」夏子は服を受け取り、天音が出て行く気配がないのを見て、仕方なくバスルームに行って着替えた。
服を着替え終わったところで、宮平一郎が外からドアをノックし、「須藤お嬢さん、入ってもよろしいですか?」と尋ねた。
夏子が返事をすると、一郎が入ってきた。彼の後ろには二台のカートがあった。
一郎は夏子が着ている服を見て、口元が怪しげに引きつった。
「須藤お嬢さん、こちらは若様が用意させた昼食と着替えです。あなたは…やはり別の服に着替えられた方がよろしいかと」一郎は、できるだけ婉曲的に言ったつもりだった。
夏子は彼の言葉の意味を察し、鏡を見てみると、確かに…少し奇妙だった。
天音という女の子は、少し変わった性格で、服装の個人的なスタイルも強く、鮮やかなレモンイエローを好み、ファッションも大胆だった。一方、夏子の服は淡い暖色系が多く、どれもシンプルだった。
「服が用意されているなら、やはり着替えます」
天音は夏子が自分の服を嫌がっていると聞いて、また顔を曇らせた。「あなたが着た服なんて、もう要らないわよ!着ないならゴミ箱に捨てればいいわ!」
夏子は彼女の怒りを恐れず、本当に服を着替えた。