第87章 心痛

夕食を済ませた後、西園寺真司はやはり医者を呼んで須藤夏子の状態をしっかりと診てもらった。

「すべて表面的な傷で、大きな問題はありません。ただ、今は暑い季節なので、傷口には特に注意が必要です。水に触れないようにするとともに、感染を防ぐことが大切です。さもないと、傷跡が残る可能性があります」

夏子はうなずいたが、あまり気にしている様子はなかった。

しかし真司はその言葉をしっかりと聞き入れていた。医者が軟膏を置いて帰った後、彼は彼女の傷をいくつか確認してみた。そこで初めて気づいたのだが、夏子の体には実はいくつもの傷跡があり、最も新しいものは彼女の手のひらにあった。

松本家の婚約パーティーの日、彼女はずっとガラスの破片を握りしめていて、手のひらの傷は骨が見えるほど深かった。完全に跡が残らないことはあり得ず、今や彼女の手のひらには、もともと白い肌の中に異なる色の白い跡がはっきりと残っていた。皮膚の模様もなく、非常に目立っていた。

一目でわかるその傷跡に、真司の瞳孔は急に縮んだ。

「これらの傷跡はどうしたんだ?」彼は無理に視線を夏子の手のひらから離し、彼女の腕と足にある浅い傷跡を指さして尋ねた。

夏子は気にせず首を振って言った。「わからないわ。たぶん子供の頃に転んだときのものじゃないかしら。ずっとあるもので、何年も経っているわ」

真司の手は無意識に強く握りしめられ、試すように尋ねた。「自分でどうやって転んだのか覚えていないのか?」

「覚えていないの。私、子供の頃にやんちゃで頭を打って、ひどい怪我をしたの。それで多くのことを覚えていないんだけど、今でも頭に浅い小さな傷跡があって、そこには髪が生えてこないの。結構醜いわ。これらの傷跡はたぶんその前にできたものじゃないかしら。どっちにしても、あの頃は小さかったし、やんちゃして傷跡が残るのは普通のことだし、これだけ年月が経てば薄くなっているから、少し隠せば見えなくなるわ」

夏子は足の傷跡をちらりと見ながら軽く話していたが、真司の表情が彼女の言葉によって徐々に変わっていることに全く気づいていなかった。彼女が気づいた時には、すでに抱き上げられてベッドに押し倒されていた。