彼女のキス、柔らかな羽毛のように軽やかだった。
確かに彼の唇を掠めただけなのに、心を掠めるよりも彼の痒みを刺激した。
驚きから喜びへの変化は、ほんの一瞬のことだった。
その一瞬の後、西園寺真司はまるで狂気に陥ったかのように、長い腕を伸ばして須藤夏子をしっかりと抱きしめ、我を忘れてそのキスを深めていった!
夏子は元々彼を慰めるつもりだけだったのに、真司が軽いキスを深いキスに変えるとは思ってもみなかった。彼の荒々しい息遣いは拒否を許さず、圧倒的な勢いで彼女の口内に侵入してきた!
「んっ——」
夏子は真司の制御不能な状態に気づき、両手で必死に押し返し始めた。しかし真司は上半身に服を着ておらず、彼女が押すたびに真司の体から伝わる熱い温度が手を焼くようだった。力を入れたいのに入れられないという無力感に、彼女は涙が溢れそうになった。
真司は本当に魔が差したかのように、夏子の抵抗を無視して体を回転させ、彼女を柔らかな布団の上に押し倒した。そして頭を下げ、彼女の唇を何度も味わった。
夏子は抵抗しきれず、受け身でそれを受け入れていた。心の中で何度も自分を慰め、いつかはこういう日が来るのだと、受け入れたくなくても受け入れなければならないと。しかしそう考えているうちに、彼女は悔しさで涙を流してしまった。
真司は彼女の涙の味を感じて初めて、自分が制御を失っていたことに気づいた。急いで顔を上げて夏子を見つめると、彼女の悔しそうな表情を見て、なぜか彼は自分が間違ったことをしたという自覚がまったくなく、むしろ涙目の夏子を見て笑い出した。
彼のその笑いに、夏子は完全に呆然とした。
「何笑ってるの!」夏子は怒りを込めて彼を見つめ、自分の口を手でしっかりと覆った。
真司の顔には冗談めかした表情が浮かび、指で優しく夏子の頬を撫でながら言った。「なんで泣くんだよ、キスするのは初めてじゃないだろ」
「あなたって——」夏子は彼にひどく悔しい思いをさせられ、真司を強く押した。
真司は力を入れず、そのまま布団に倒れ込み、夏子が洗面所へ走っていくのを見て、再び不謹慎にも声を出して笑った。
夏子は洗面所のドアを内側から鍵をかけ、息も荒く洗面台に伏せて、鏡に映る自分の血を流すほど赤くなった顔を見つめた。腫れた唇から二つの言葉が絞り出された。「最低!」