第115章 逆襲せよ、西園寺夫人!(3)

「真司、相談したいことがあるの」須藤夏子には心を打ち明けられる人がいなかった。西園寺真司は彼女の夫であり、彼女が決断に迷ったとき、唯一相談できる人だった。

真司はめったに夏子がこんな不確かな口調で話すのを聞いたことがなかった。しかも、とても深刻そうに聞こえたので、彼も真剣な表情になって尋ねた。「どうしたの?」

夏子はさっきのことを真司に話し、悩みながら聞いた。「私、行くべきかどうか迷ってるの」

真司は緻密な論理的思考を持ち、事実に基づいて本質を突いた。「何か心配なことがあるの?」

「うん、今まで芸能界に入って歌手になろうなんて考えたことなかったの。一曲歌うだけなら大したことないけど、そうすると片足を芸能界に踏み入れることになるわ。櫻井部長が言うには、大きな制作だし、それに上手くできなくて恥をかくのが怖いの」夏子は隠し事をしなかった。隠すつもりなら、真司に相談しなかっただろう。

真司は彼女のそんなごちゃごちゃした理由など気にしなかった。彼女が芸能界に入りたいなら、彼の力で完全に順風満帆にしてあげられる。恥をかくことについては…彼がそこに立つだけで、誰が彼の愛する妻の歌が下手だなんて言えるだろうか!

「行きたいの?」

「実は少し行きたいかも」夏子はもちろん行きたかった。ただ、彼女の理由はとても純粋で、アイドルの歌を歌いたい、自分の好きな歌を歌いたいだけだった。

「じゃあ、試してみたら?歌うのが好きなら、心を無にして歌えばいい。他のことは何も気にしなくていい」

夏子は彼の数言葉で心が決まり、数秒後に言った。「わかった、あなたの言う通りにする。試してみるわ」

真司は自分の言葉がこれほど重みを持つことに気づき、すぐに楽しくなって、冗談を言おうとした。

しかし電話の向こうの愛する妻はそれに気づかず、決心がついたとたんに電話を切り、嬉しそうに櫻井静に返事をしに行った。

真司は電話から聞こえるツーツーという音を聞きながら、外の天気よりも重い気持ちになった…

静は夏子がこんなに早く決断するとは思っておらず、驚きつつも喜んで、明日夏子を連れて長谷米花に会いに行くと言い、準備をするよう伝えた。

夏子も確かに準備が必要だと感じ、米花がこれまでに書いた曲をすべてダウンロードした。特に近年の映像作品のために作られた曲に注目した。