「長時間イヤホンをつけていると耳に良くないよ」
西園寺真司は彼女が完全に夢中になっているのを見て、イヤホンを引き抜いた。距離があっても、イヤホンから漏れる音楽が聞こえるほどだった。音量の大きさが想像できる。長時間このような状態で音楽を聴けば、聴力に悪影響を及ぼすだろう。しかも彼女が使っているのは耳に直接差し込むタイプのイヤホンだった。
須藤夏子は突然中断されて、不満げに口をとがらせた。「何するの?もう少し聴かせてよ」
真司はスマホを車のオーディオシステムに接続した。夏子が二度目の不満を口にする前に、彼女が先ほど聴いていた曲が車内に流れ始めた。
夏子はすぐに黙った。
真司も彼女とそれ以上会話せず、そのままショッピングモールへと車を走らせた。
夏子は車がS&Y百貨店に停まるのを見て、少し驚いた。真司が何か買い物をするつもりだと思い、外の大雨を見ながら言った。「外、雨がすごいね。私は車で待ってるから、買い物が終わったらすぐ戻ってきてね」
真司は車を降り、傘を差しながら後部ドアを開けて夏子を引っ張り出した。「新しいイヤホンを買いに行くんだ。自分で選んで」
夏子はその言葉を聞いて目を輝かせ、さっと立ち上がって彼と一緒にショッピングモールに入った。
彼女は今日スマホに付属していたイヤホンを使っていたが、長時間耳に入れていると痛くなる。最近頻繁に音楽を聴く必要があるので、確かに良いイヤホンが必要だった。
真司は夏子を連れて直接有名な電気店へ向かい、数種類のイヤホンを選んだだけでなく、音楽鑑賞専用の電子機器も何点か購入した。これらを買い終えた後、夏子をレストランに連れて行き夕食を食べた。ホテルに戻ったときには既に夜の7時半だった。
「服が濡れてる。先にシャワーを浴びなさい」真司は夏子の足と背中が雨で濡れているのを見て、先にシャワーを浴びるよう促した。彼女が生理中であることを覚えていて、少しでも冷やさないようにと気遣っていた。
夏子は素直に買ったばかりの品々を置き、服を取りに立ち上がった。そのとき、ホテルのルームサービススタッフが昨日洗濯に出した衣類を届けてきた。
「旦那様、奥様、本日洗濯した衣類です。ソファに置かせていただきました」お客様が在室していたため、ルームサービススタッフは衣類をクローゼットにかけずにいた。