捨てた?
「どうして捨てたの?全部捨てたの?」須藤夏子は今、疑念でいっぱいだった。須藤明良と深井杏奈の言葉を疑っていた。どうしてちょうどよく写真を捨てたりするだろう?
深井杏奈は眉をひそめ、表情がますます奇妙になってきた。しばらくしてから答えた。「私とあなたの間であんなことがあったから、城太が……だから、かなり捨てたの」
彼女の説明はとても曖昧だったが、夏子には理解できた。
石川城太に彼女の写真を見られるのが怖くて、だから写真を捨てたというのか?
なかなかいい言い訳だが、本当かどうかはわからない!
「私の写真は捨てたとして、あなたの写真はまだあるんじゃない?」夏子はさらに探るように尋ねた。
杏奈は眉間にしわを寄せ、少し疑わしげに夏子を一瞥した。「あなた、私の写真で何をするつもり?」
夏子はできるだけ平静を装い、杏奈に何かを悟られないようにしたかった。そこで西園寺真司を見た。
真司は夏子が何をしたいのか分からなかったが、それは夏子を助けることの妨げにはならなかった。すぐに声を出した。「僕の義理の母である陸橋夫人があなたの写真が欲しいんです。彼女はあなたが小さい頃に一度だけ会ったことがあって、この前、偶然夏子とあなたの話になった時、あなたの子供の頃から今までの写真を見せてほしいと言っていたんです。夏子は次回必ず持っていくと約束したんです」
杏奈は半信半疑だったが、やがて瞳に明るさが増した。笑顔で真司に言った。「ちょうどあと一ヶ月で私の結婚式があるの。祖母が陸橋夫人を招待したから、その時に私から直接陸橋夫人にお見せするわ」
真司は眉をひそめ、鋭い目が一瞬きらめいた。立ち上がって夏子の横に立ち、こっそりと目配せした。
夏子は杏奈がそう答えるとは思っていなかったので、一時的にどうすればいいか分からなくなった。
杏奈に写真を出すよう強要し続けるわけにもいかない。そうすれば杏奈の疑いを招くだろうから、今は諦めるしかなかった。
真司は彼女に少し待つよう合図し、さりげなく彼女の手のひらを握った。
須藤明良もタイミングよく杏奈を助け出した。「今日は珍しく西園寺若様が夏子と実家に戻ってきてくれたんだから、ここで昼食を取っていったらどうだい」