第177章 石川お婆様【追加更新】

「彼女がどうしてここに来たの？」

須藤夏子はその言葉を聞いて西園寺真司を一瞥し、彼の少し驚いた視線の先を見ると、手入れの行き届いた老婦人が須藤家に入ってくるところだった。

その老婦人は60代くらいに見え、痩せた顔には歳月が刻んだ風霜があり、少し垂れ下がった両目には老練さと深遠さが隠されていて、とても強い存在感を放っていた。

「彼女は誰？」夏子は好奇心を抱いて尋ねた。彼女は須藤家で育ったが、この老婦人を見たことがなく、須藤家の親戚ではないことは確かだった。

真司は夏子の耳元に近づき、彼女に数言葉を囁くと、夏子は全身が凍りついたようになった。

なんとこの人物が石川お婆様だったのだ。

彼女は石川お婆様に会ったことはなかったが、以前石川城太の口から彼女に関する多くの話を聞いていた。

この石川お婆様は、石川家の中でも特別な存在と言えるだろう。

石川お婆様は生涯で石川家のために一人の娘と三人の息子を産んだが、彼女と石川お爺様は夫婦ではなかった。

石川お婆様は19歳の時に石川お爺様の最初の娘を産み、その後「石川家のお嬢様の母親」という立場で石川家に住むようになった。そして5年の間に、さらに石川お爺様のために三人の息子を次々と産み、末っ子が一歳になった時、つまり彼女が25歳の年に、石川お爺様との別れを宣言し、10億円と豪邸を別れの代償として受け取り、東京で最も裕福な独身女性となった。

石川お爺様は生涯で三人の妻と数え切れないほどの女性と関係を持ったが、子孫は石川お婆様が産んだ一人の娘と三人の息子だけだった。石川お爺様は亡くなる前に、生涯独身を貫いた石川お婆様を石川家に迎え入れるよう命じ、石川家の財産も三つに分け、そのうちの一つを石川お婆様に与えた。

石川お爺様が亡くなった後も、石川お婆様は石川家に留まって息子たちに養われることはなく、かつて石川お爺様から与えられた豪邸で独り暮らしを続け、ほとんど外出しなかった。

城太によれば、石川お婆様は海外に嫁いだ自分の娘以外の三人の息子とはあまり親しくなかったが、石川お爺様が遺言を残していたことと、彼女が石川お爺様の遺産を持っていたため、石川家の全員がこの石川お婆様を非常に敬っていたという。

ここ5年ほど、石川お婆様はまるで隠居したかのように暮らしていたが、なぜ突然須藤家に現れたのだろうか？