第178章 平手と飴玉

「お婆様がいらっしゃるとは、本当に光栄です。何をぼんやりしているんだ、早くお茶を入れなさい！」

須藤明良は笑顔で迎え入れながら、石川お婆様を丁重に席へと案内し、同時に木村眉子に小声で指示した。

眉子も明らかに石川お婆様を貴客として扱い、喜んで良いお茶を入れに行ったが、お婆様は終始表情を変えず、眉子の明らかな取り入りにも一切反応せず、目の前に出されたお茶にも一度も手をつけなかった。

「私が今日ここに来た理由は、あなたたちもよくご存知でしょう。城太が杏奈を育ててくれたあなたたちに孝行したいと思っていることについては、私は異議ありません。今日ここで私の立場を明確にしておきます。富景の別荘と定南通りの料亭は、あなたたちに差し上げることに同意します。今後須藤家に何か困ったことがあれば、石川家も見過ごしにはしません。しかし、あなたたちも分別をわきまえるべきです。石川家は底なしの穴を埋めることはできません」

明良は表情を引き締め、急いで辞退した。「お婆様、それはとんでもないことです。私たちは石川家から何かをいただこうなどとは思ったこともありません。私たちは杏奈の叔父と叔母に過ぎませんし、たとえ彼女の両親であってもそのようなことはできません。別荘と料亭はお引き取りください」

お婆様は冷静な目で明良の顔を一瞥し、静かに言った。「すでにあなたたちに与えると決めたのだから、受け取りなさい。あなたたちは杏奈を二十年以上育ててきた。これはあなたたちが当然受け取るべきものです」

明良の顔色がわずかに青ざめた。

お婆様のこの二つの発言は、まさに飴と鞭のようなもので、その意図は明白だった。

石川家は彼らが杏奈を育てた恩があるからこそ、須藤家にこれらを与えるのであり、しかもこれだけだ。もし彼らが石川家を金づるとして利用しようと考えているなら、そのような考えは早々に捨てた方がいい。石川家が自ら与えるもの以外は、何も得られないということだ。

深井杏奈が石川家のお嫁さんになったとはいえ、石川家はまだこのお婆様が采配を振るっており、彼女の承認なしには誰も勝手に決めることはできない。

小さな恩恵で彼らの欲望を抑え込むつもりだ！