第176章 あなたのおかげで、でもあなたのためではない【追加更新】

結婚式の話題は西園寺真司の態度表明で終わった。

須藤明良も、この話題にこだわりすぎて西園寺真司の反感を買うことを恐れ、深追いはしなかった。

11時半近くになると、須藤明良と木村眉子は時間制のお手伝いさんに昼食の準備をさせていた。深井杏奈は手伝おうとしたが、眉子に断固として止められた。

須藤夏子はそもそも台所に入るつもりはなく、別荘の小さな花壇で以前自分が植えた鉢植えの花の世話をしていた。ところが、石川城太が彼女の後を追ってきた。

「夏子、少し話がある」城太は今や夏子の自分に対する態度を理解し、強引に近づくことはできないと分かっていた。しかも西園寺真司もここにいるので、賢明にも夏子との間に一定の距離を保った。

夏子は眉をわずかに寄せたが、あえて城太を避けることもせず、小さな水差しで水をやり続け、一言も発しなかった。

城太は不安げに拳を握りしめ、自ら声をかけた。「夏子、正直に教えてくれ。最近、元気にしているか?」

夏子は少し笑いたくなった。美しい瞳の奥の光が花々を通り抜け、窓の中の真司に落ちた。珍しく返事をした。「私はとても元気よ。そしてこれからもっと良くなっていく。あなたのおかげだけど、あなたのためじゃない」

城太の胸は鋭く刺されたような痛みを感じた。突然、何も言葉が出てこなくなった。

彼女の悠然として冷淡な様子を見て、彼は落胆して深く息を吸い込んだ。しばらくしてから、ようやく小声で言った。「夏子、僕たちの間が終わったことも、僕が君を深く傷つけたことも分かっている。でも覚えていてほしい、かつて...僕は本当に君を愛していた」

「愛?」夏子は彼がなぜ今になってもこんなことを言うのか理解できず、冷たく返した。「石川城太、あなたはせいぜい私を心から好きだっただけで、愛するところまでは至っていない」

「いや、僕は本当に愛して——」