第175章 彼女を大切にする人はまだいる【追加更新】

深井杏奈は心の中で思わず人の不幸を喜んでいたが、傍らにいた石川城太は複雑な表情を浮かべ、喜びなのか怒りなのか分からない様子だった。

その場にいる全ての人の中で、彼は須藤夏子が幸せになることを最も願っていたが、同時に夏子が不幸になることを最も願っている一人でもあった。

夏子が彼のもとを去った後、幸せに暮らしているなら、彼の罪悪感は軽くなるだろう。

しかし夏子が本当に幸せになっていたら、彼は納得できず、絶望さえするのだ!

彼は夏子の心の中にまだ自分のことを思い、慕っていてほしいと願っていた。そうすれば、彼と彼女の間にはかすかな可能性が残されているはずだ。もし夏子が幸せに暮らしているなら、どうして彼のことを思い出すだろうか?

城太は制御できないように視線を夏子の整った小さな顔に留め、彼女のどんな表情も見逃すまいとした。まるで彼女の表情から喜びや悲しみを読み取りたいかのようだった。

しかし結果は彼を失望させた。

夏子は感情を隠すのが得意な人間ではなかったが、これらの人々に傷つけられた後、適切なタイミングで自分を隠すことを学んでいた。

特に、彼女はここにいる誰一人として彼女が幸せになることを望んでいないことを知っていた!

「夏子、本当に結婚式をするつもりはないのか?」須藤明良は再度尋ね、その顔にはかすかに気づきにくい笑みが浮かんでいた。

夏子は彼の実の姪であり、妹が残した唯一の血縁だった。彼はすでに彼女に対して申し訳ないことをたくさんしてきた。もし夏子が幸せな居場所を見つけることができれば、彼の罪悪感は軽減されるだろう。しかし彼にとって、西園寺真司は夏子の良い帰る場所ではなかった。

それに、彼の心には恐れがあった。真司が夏子に対して本気であることを恐れ、さらに二人が長く一緒にいることで、かつての真実が明らかになることを恐れていた。人は自分のためにならないことはしないものだ。だから彼には暗い期待があった。真司が夏子をただの新しい玩具として扱い、飽きたら捨ててくれることを望んでいた。そうすれば、彼の家族は安全でいられるのだから!

夏子はこれらの人々の入り混じった態度と表情を目に収め、頷きながら、再び自分の悲しさを感じていた。

やはり、彼女を祝福する人は誰もいなかった……明良も含めて。