第225章 陸夫人来臨

急いで身支度を整えた須藤夏子と西園寺真司は、自ら都淵空港へ向かった。

夏子は自分たちの行動が十分早いと思っていたが、予想外にもっと早く動いた人がいた!

「どうして彼らもここにいるの?真司、お母さんが東京に来ることは、あなたも知らなかったんじゃないの?」夏子はVIPルームに深井和久と深井詩乃が立っているのを見て、顔に一瞬嫌悪感を浮かべた。

真司はもちろん深井がなぜここにいるのか分からなかったが、ただ軽く眉を寄せると、夏子の手を引いて中へ進んだ。

夏子が入室すると、和久と詩乃も物音に気づいて入口の方を見た。

和久は真司を見ており、詩乃は夏子を見ていた。

「来たのね、たった30分で、随分早いわ」陸橋夫人の稲垣令枝は夏子を見るなり、先ほどとは違う笑顔を見せた。

陸橋軽穂はすぐに母上様のバッグを持ち、真司はスーツケースを取りに行った。

「来る前に一言言ってくれれば良かったのに」真司は深井和久と詩乃を完全に無視して、低い声で言った。

軽穂は鼻をこすりながら言った。「明後日来る予定だったんだけど、今日父さんがフランスに出張に行って、母さんが一人で家にいるのが退屈だから、早めに来ることにしたんだ」

真司はそれを聞いて初めて和久の方を見て、皮肉げに言った。「君たちは随分早く来たようだね」

和久は居心地悪そうに笑い、まだ口を開く前に、傍らの詩乃が近づいてきて、馴れ馴れしく真司に話しかけた。「真司兄さん、久しぶり」

しかし真司は彼女に一瞥もくれず、片手でスーツケースを持ち、もう片方の手で夏子の手を取って、すぐに立ち去った。

陸橋夫人は軽穂に目配せして、先に真司の後を追い、軽穂は慣れた様子で和久の肩を軽く叩いて言った。「兄貴が来たから、もう送ってもらう必要はないよ。深井お婆様によろしく伝えてくれ。数日後に自分で挨拶に行くと」

和久は頷き、同じように軽穂の肩を叩き返して笑った。その表情には怒りの色は全くなく、まるで真司の態度に慣れているようだった。

しかし傍らの詩乃の顔色は非常に悪かった!

真司たちが完全に去った後、詩乃の顔には悔しさが浮かんだ。「お兄ちゃん、私はただ真司兄さんに挨拶したかっただけなのに…」