第265章 私を連れてウェディングフォトを撮りに来たの？

須藤夏子は、自分が深井杏奈の世話をしたことが杏奈に知られていることを知らなかった。

しかも彼女はそれを気にもしていなかった。

昨晩、夏子が杏奈の世話をしたのは、偶然のことだった。

というのも、彼女がベッドに戻って寝ようとすると、西園寺真司が厚かましくも這い上がってくるからだ。彼女はその時怒っていたので、幼稚にも真司と付き合って、彼が耐えられなくなって床で寝てしまうまで待ち、それからようやくベッドに戻って眠ったのだ。

ベッドに戻る前に、彼女は「ついでに」杏奈の世話をしたのだった……

「あれ、これは帰り道じゃないよね？兄貴は家に帰らないの？」陸橋軽穂は後部座席に座り、顔に日光を浴びながら外の景色を楽しんでいたが、見ているうちに何かがおかしいことに気づいた。

鈴木森吾はずっと目を閉じて休んでいたが、軽穂の言葉を聞いて窓の外を見て、眉をひそめた。

「そうだね、これは帰り道じゃない。どこに行くの？」

真司は夏子の長い髪を弄びながら言った。「写真を撮りに行くんだ。それからいろいろ買い物をしよう。今日一日、君は外出できなくなるからね。」

夏子は彼の言葉に、ますます不思議に思った。一方、軽穂と森吾の目には同時に理解の色が浮かび、真司を深く見つめた。

1時間後、車はおしゃれなビルの前に停まった。真司は夏子を連れて車を降り、直接最上階のスタイリングルームへ向かった。服、靴、アクセサリーはすべて前もって用意されており、着替えるだけでスタイリングを始められる状態だった。

夏子は自分のウェディングドレスよりも少しシンプルな白いドレスを見て、唇を震わせながら尋ねた。「もしかして、サプライズでウェディング写真を撮りに連れてきたの？」

真司は彼女をちらりと見て尋ねた。「俺のウェディング写真がこんな簡素な場所で撮れると思うか？」

夏子：「……」

スタッフ：「……」

服を着替えた後、スタイリストが夏子と真司のメイクとヘアスタイリングを始めた。軽穂は脇に座って雑誌をめくっていたが、真司のかっこいいスーツ姿を見ると、ぱっと立ち上がり、自分も礼服を選んで着替えた。森吾も何かを思いついたようで、同じように真似をした。

真司は鏡越しにこの光景を見て、冷たく尋ねた。「お前たち、何を騒いでるんだ？」