第278章 犬も犬を噛む、一口の毛(2)

石川城太が入ってきたとき、深井杏奈が腹を押さえて椅子に座り、とても苦しそうな様子をしているのが見えた。

しかし彼は今、杏奈のことを気にかける余裕はなく、一束の写真を彼女の前に投げ出した。

杏奈はそれを見るなり、顔色がさらに青ざめた。

なぜなら城太が彼女に見せたのは、彼と須藤夏子の写真だったからだ!

「あなたの元カノとの写真を持ってきて、私に示威行為をするつもり?」杏奈の口調はやや硬く、自信なさげに聞こえた。

城太は冷笑し、杏奈の向かいのソファに座って言った。「それは私が聞くべき言葉じゃないか?これは西園寺真司が私にくれた写真だ。誰かがこれらの写真を夏子に送り、私の結婚式に来るのを阻止しようとしたらしい。杏奈、こんな愚かなことをしたのはお前じゃないだろうな?」

杏奈は息が喉に詰まり、上にも下にも行かず窒息しそうな感覚に襲われた。城太の心の中で、彼女はそこまで愚かな人間になってしまったのだろうか?

彼女はもう城太と無駄話をする気も、自分から嫌な思いをする気もなく、率直に言った。「これは深井詩乃がやったことよ。私は関係ないわ!」

城太は目を細めた。「深井詩乃…彼女はどこだ!」

「さっき帰ったわ。安心して、彼女にはこれらの写真を公表する勇気はないわ。自分が賢いと思って人を脅すくらいしかできないけど、念のために彼女を見張らせた方がいいわね。あの愚かな女、発狂したら理性なんて持ち合わせていないから」

城太は後ろにいるアシスタントに目配せし、アシスタントはすぐに書類を置いて出て行った。

杏奈の視線は思わずその書類に落ち、少し体を起こして城太を見つめた。

城太の目は杏奈と書類の間を行ったり来たりし、唇に薄く冷たい笑みを浮かべた。

この笑顔を、杏奈はあまりにもよく知っていた…

「あなたがここに来たのは、写真のことだけじゃないでしょう?」杏奈はほぼ確信していた。城太は彼女を目当てに来たのだ、しかも善意からではない。

城太はその書類を杏奈の前に押し出し、言った。「まずこれを見てくれ」

杏奈は不安げにその書類を手に取り開いた。タイトルの大きな文字を見た瞬間、彼女の顔色が青くなった!

離婚協議書!