第351章 本当に彼女が得をした!

客がほぼ揃った後、石川商事のパーティーの主役がようやく姿を現した。

バイオリンの音色が優雅に響き渡る中、長年表舞台から遠ざかっていた石川お婆様が数十年ぶりに公の場に姿を現し、多くの人々の関心を集めた。

そして深井お婆様と一緒に現れたのは、石川城太と深井杏奈の「夫婦」だった。この三人がスポットライトの下に現れると、会場の記者たちは沸き立ち、こぞってカメラやビデオカメラを向けて撮影を始めた。

同時に、招待客の間でも小声の会話が交わされ始めた。その多くは杏奈と城太の二人に向けられたものだった。

「あの深井お嬢様、流産したんじゃなかったの?たった数日で退院して、しかもパーティーに参加するなんて、回復が早いわね」

「体裁を保つためでしょ?あの日彼女が階段から落ちて流産したことは誰でも知ってるわ。今では外でも大騒ぎになってて、流産のことで石川若様が彼女と離婚するつもりだとか、最初から子供を使って石川若様を脅して婚約したんだという噂まであるわよ」

「何を言ってるの!深井お嬢様と石川若様は昔からの知り合いで、本当に関係があったのよ。そうでなければ結婚前に子供ができるわけないでしょ。城太が彼女と離婚したがってるのは、主に彼女の身分のせいよ。この前のニュース見なかったの?あの深井お嬢様、偽物なのよ」

「それも聞いたわ。でも嘘だと思ってたけど...」

「嘘か本当かは、深井家の態度を見ればわかるでしょ」

数人の貴婦人たちはそう言いながら、揃って深井家の人々がいる方向を見た。

一方、須藤夏子もこれらの噂話を聞いて、深井家の態度に興味を持ち始めた。西園寺真司の大きな体を隠れ蓑にして、視線を横に向け、少し離れた場所にいる深井家の人々を観察した。

深井お婆様の表情はまだ落ち着いていた。彼女の視線は常に再び表舞台に戻ってきた石川お婆様に向けられており、隣にいる城太と杏奈のことは完全に無視していた。

考えてみれば当然だ。今回のニュース事件では石川家と深井家の両方が巻き込まれており、この問題をどう処理するかは両家の利益に直接関わることだ。だから今回の事件の対応について、深井家と石川家はきっと事前に協議していたはずで、深井お婆様は杏奈が今日のパーティーに出席することを知っていたに違いない。心の準備もできていたので、周囲に気配を悟られることはなかった。