第350章 豚を装って虎を食らう

西園寺真司がこのように庇ってくれたため、深井お婆様は須藤夏子の口から答えを得られなくても、もう彼女を追い詰めることはできなかった。

それに、夏子と西園寺の言葉は、ある意味で再び夏子と深井家の関係を否定するものだった。もし彼女が執拗に問い詰めれば、かえって逆効果になるだろう。

「夏子、あなたのお父さん——いいえ、今は義理の叔父さんと呼ぶべきね。あなたの叔父さんはすでに認めたわ。あなたこそが深井家からはぐれた本当の孫娘だって。今あなたが私をおばあちゃんと認めるかどうかに関わらず、おばあちゃんの心の中ではもうあなたを受け入れているのよ。もしいつか気が変わったら、おばあちゃんに電話してね。深井家の門はいつでもあなたに開かれているわ」

深井お婆様は確かな証拠を出せないため、感情に訴えるしかなかった。しかし、この言葉を言い終えても、夏子はまだ何の反応も示さなかった。彼女はすぐに深井泰歩に目配せした。

泰歩は困ったように眉をしかめ、しばらく言葉に詰まった後、ようやく一言絞り出した。「夏子、お前がお父さんとおばあちゃんが今になってようやくお前を見つけたことを恨んでいるのは分かる。でも深井家はやはりお前の家だ。お前もずっと——」

ここまで言って、彼はもう次に何を言うべきか分からなくなったようだった。

夏子は顔を伏せ、目には嘲りの色が満ちていた。

深井家の人たちの偽善的な態度にはうんざりだった。血のつながりなど全くないのに、彼女の身分を無理やり深井家の娘に結びつけようとする。西園寺を取り込むためなら、手段を選ばないというわけだ!

「夏子、あなたはどうして何も言わないの?」深井お婆様はこんなに頑なな人を見たことがなかった。彼女と泰歩がこれだけ話しても、夏子はまばたきひとつせず、まるで彼らの言葉を全く聞いていないかのようだった。

西園寺は眉を寄せ、夏子に何か反応するよう促した。

夏子は確かに彼を失望させなかった。柔らかい声で言った。「また何か間違ったことを言って誤解されるのが怖いので、黙っているほうがいいと思います」

深井お婆様は彼女にひっくり返るほど腹を立てそうになった。幸い公の場だったため、体面を保つために必死に怒りを抑えていた。