第370章 彼女の気まぐれに付き合う

「行っておいで、早く戻ってきてね。」

西園寺真司は何も気づいていないふりをして、彼女に便宜を図った。

須藤夏子はさっそく自分の小さなハンドバッグを持って近くのショッピングモールへ向かい、中古バッグを買い取ってくれる場所を探した。できればこのブランドの専門店があれば尚良かった。

まるで天が夏子の祈りを聞いたかのように、彼女がモール内をたった3分歩いただけで、高級ブランドバッグの買取店を見つけた。彼女は店内に入って一周見回した後、バッグを取り出して尋ねた。「このようなバッグは買い取っていただけますか?」

店員は彼女のバッグを手に取って見ると、目に驚きの色が浮かんだ。「9割は新品同様ですね、状態も良いです。領収書はありますか?」

「領収書?持っていませんが、中にタグはあります。」彼女のバッグはすべてブランド直営店から自宅に届けられたもので、領収書など必要なかった。

店員は少し残念そうな表情で言った。「お客様、当店では中古品を買い取る際に領収書が必要なんです。そうでないと、このバッグが本物だという保証ができませんので。」

「でも私のバッグが偽物であるはずがないじゃないですか。あなたたち自身で本物かどうか見分けられないのですか?」夏子は今すぐお金が必要で、少なくても構わなかった。

「お客様、実は私たちが欲しいわけではなく、私たちは真贋を見分けられますが、買い手はそうではありません。領収書がないと、バッグを買い取っても売れないんです。」店員はそう言うと、申し訳なさそうに夏子に向かって首を振った。

夏子は歯を食いしばり、どうしたらいいのか分からなくなった。

ちょうどそのとき、店内に黒いスーツを着た中年女性が歩いてきた。その女性が近づくと、視線はすぐに夏子のバッグに落ちた。

「これはAMIが先月発売したばかりの限定版ですね?世界でたった10個しかないものです。」

夏子はうなずいたが、実際には何も分からず、ただ西園寺が彼女のために用意してくれたものはすべて高価だということだけを知っていた。

店員は中年女性がこのバッグに興味を示していることに気づき、近寄って言った。「マネージャー、このバッグには購入レシートがありません。」