第27章 秘方

青木佳織は彼女の迫力に怯えたようで、恐る恐る武田奥さんの側に寄り添った。

武田奥さんはすぐに彼女を庇った。「美智、もう少し声を落として話しなさい。そんなに怖い顔をして何になるの?佳織や子供を怖がらせたらどうするの?確かに橋本家会社は倒産したけど、全く価値がないわけじゃないでしょう。以前、よく売れていたコンドロイチンZS錠があったじゃない。その処方を青木氏病院に売ったらどう?」

美智は冷ややかに佳織を見つめた。なるほど、薬の処方に目をつけてきたわけか。

橋本家の会社は製薬会社で、今日までなんとか生き延びてこられたのは、すべてこの処方のおかげだった。

コンドロイチンZS錠は製造コストが低く、利益率も悪くなかった。薬効も良かったため、腰痛患者からずっと人気があった。会社が製造する他の薬は、効果が良くなくて売れないか、価格が高すぎて一般患者には手が出ないかのどちらかだった。

そして橋本家の会社が破産したのは、海東が勝手に薬の価格を大幅に引き上げたからだった。コンドロイチンZS錠は元々1箱40元だったのに、彼は売れ行きが良いのを見て、価格を一気に200元に引き上げ、さらに大金を使って有名人に広告を依頼した。

他の薬も次々と値上げし、誰が止めても聞く耳を持たなかった。

かろうじて収益を維持できていた会社は、コンドロイチンZS錠の売上が急落したことで資金繰りが一気に悪化し、ほぼ一夜にして破産してしまった。

そして今、彼はコンドロイチンZS錠の処方を佳織に売ろうとしているのか?!

美智はきっぱりと拒否した。「コンドロイチンZS錠の処方は私たち家族だけの秘伝です。売るつもりはありません」

海東は焦った。「なぜ売らないんだ、売るんだよ!会社はもう破産したんだ、秘伝を持っていても何の役に立つ?早く売って金に換えて、借金を返さなきゃ」

美智は怒りで顔が青ざめた。「お父さん、この処方は母が生前、数え切れないほどの苦労をして開発したものよ。これは母のもので、あなたのものじゃない!あなたには売る権利なんてないわ!」

「何が私のだの彼女のだのって、彼女は俺と結婚したんだ、すべては俺のものだ。彼女自身が俺のものなんだから、処方なんてなおさらだ。この件は俺が決める、お前はさっさと帰れ、邪魔をするな!」