美智は外で起きていることを何も知らなかった。彼女は自分が送信した英文の数行を見て、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
二晩徹夜して、彼女はついにシステムの脆弱性を見つけ出し、そして丁寧に挨拶し、自己紹介をして、賞金について触れ、最後に連絡を取ってほしいと依頼した。
100万、米ドルだよ!
これで野々村四郎をしばらくは黙らせられるはずだ。
彼女は時間を確認して、もう朝の9時過ぎだと気づいた。仕事に没頭していて、書斎のカーテンも閉めていたから、夜が明けたことにも気づかなかった。
美智は急いでパソコンを閉じ、慌てて身支度を整え、マンションから飛び出してタクシーに乗り込み、会社へと直行した。
会社に入ると、同僚たちが集まって熱心に議論しているのが見えた。
「森田グループは今回大恥をかいたね。まだ脆弱性のあるシステムをリリースするなんて。」
「でも、そうとも限らないよ。彼らのシステムを見たけど、レベルはかなり高いよ。少なくとも私なら突破できない。」
「私もダメだな。見てみたけど、あれはcrisisで公開懸賞されていたシステムと同じだ。何千人ものハッカーでもスカイシステムを突破できなかったんだ。」
美智はその場に立ち尽くした。
彼女は少し呆然として振り向いた。「あなたたちが話しているのは、どのシステム?」
「美智、知らないの?森田グループが新しいスカイモバイルシステムをリリースしたんだよ。世界同時配信でね。」
「配信中に、ハッカーがスカイシステムを突破して、挑発的なメッセージを送ってきたんだ。発表会を主催していた武田社長は大恥をかいたよ。」
「そのハッカーは『神を倒す勇者』って名乗ってる。私はcrisisに何年も登録してるけど、こんな凄腕の人がいるなんて知らなかった。知ってる?」
美智は無理に笑顔を作った。「い、いいえ、知らないわ。」
そう言うと、彼女は自分のオフィスに戻り、パソコンを開いてニュースを確認し、呆然としてしまった。
どうして森田グループだったの!
しかも直樹の兄が開発したシステムだなんて。
彼女はただ挨拶をして、システムを突破できたことを証明したかっただけなのに。挑発なんてしていない!
彼女はとても礼儀正しかったのに!