第142章 救出

美智は誰かの墓石の前に座り、両足を縄で縛られ、頭上には鋭い刃物が吊るされていた。

この状況は異様極まりなかったが、彼女は動じることなく、針を一本取り出し、消毒した後、小さな誘拐犯の頭にそれを手際よく刺した。

彼女は心の中で母親に謝った。かつて母の墓前で、二度と他人の病を治さないと誓ったからだ。

彼女はこれまで鍼灸の練習をする時、いつも自分自身を練習台にするか、祖母や叔父、小動物たちに針を打っていた。

彼女が救助した動物たちは動物園一つ分になるほどだったが、他人の病気を治すことは決してなかった。

なぜなら、母親は人の病を治している時に、その患者に残酷に殺されたからだ。

この出来事は幼い彼女に大きなトラウマを与え、一時期は血を見ることさえできなくなった。

祖母が少しずつ彼女のその癖を治してくれたのだ。

彼女はかつて、母親のように人の病を治したくない、人を救うくらいなら犬を救う方がましだと思っていた。

なぜなら、感謝することを知らない人がいて、その人を救えば自分の命が危険にさらされるかもしれないからだ。

しかし今は状況が特殊すぎて、他に選択肢がなかった。

銀の針が次々と小さな誘拐犯の皮膚に刺さっていった。彼女はしばらく針を使っていなかったが、動作の連続性と熟練さには影響がなかった。これは幼い頃から練習してきた基本だったからだ。

十本目の針を刺したとき、小さな誘拐犯が少し動いた。

十一本目の針で、彼は突然視界がはっきりしてきたことに気づいた。

彼は急いで言った。「お父さん、ものがぼやけなくなった!はっきり見える!今夜は霧がなかったんだね!」

誘拐犯は非常に喜び、もはや刀で美智を脅すこともなかった。どうせ彼女は足を縛られて逃げられないのだから。彼は息子の前に座り、涙が出そうになった。「よかった、本当によかった、息子よ、これで助かるぞ!まさか誘拐したのが名医だったとはな!」

彼自身も視力に問題を抱えていて、息子の視力が回復したと聞いて、美智に早く自分の頭にも針を刺してほしいと思わずにはいられなかった。

美智は実際に彼にも針を打ち、彼もすぐに視力回復の喜びを感じた。

さらに、長い間彼を悩ませていた頭痛も大幅に軽減され、全身が軽くなったように感じた。

夜明けが近づく頃、美智は鍼灸を終えた。