太陽はすでに沈み、美智と従姉妹は祖母のそばに寄り添っていた。二人とも孝行者で、一人は祖母の顔と手を拭き、もう一人はマッサージをしていた。
祖母は命の危険を脱し、姉妹二人の表情は以前よりもずっと楽になっていた。
「奈々子、どうして自分の家に戻ったの?陸直樹と喧嘩したの?」
美智はうなずいた。「彼と離婚するつもりよ」
「えっ?」
葉山紗里は少し驚いた。「あなた、彼のこと好きだったじゃない?彼が初めておばあちゃんの家に来た時から好きだったでしょ。何があったの?」
美智は無理に笑顔を作った。「彼には別の女性ができたの。ニュースを検索すれば大体わかると思うわ」
「どうしてそんなことができるの!」
紗里は普段あまりニュースを見ないが、今はとても怒っていて、少し慌てていた。「まずいわ、今日彼にあなたの過去のこと、おばさんのことを話しちゃったわ。これからはあなたに優しくしてって言ったのに。彼の心には別の人がいたなんて。知っていたら言わなかったのに」
「大丈夫よ、従姉妹。彼が知ったところで何も問題ないわ」
美智は彼女が自分のためを思ってのことだと知っていたので、気にしなかった。「紗里、あなたはどう?義兄さんは優しくしてくれる?」
「とても良くしてくれるわ。和喜夫が稼いだお金は全部私に渡してくれるの。私のことは心配しないで、あなたは自分のことをしっかり大事にしてね」
美智は彼女が幸せに暮らしていることを知って安心した。時計を見て、静かに言った。「紗里、そろそろ帰った方がいいんじゃない?高野さんはまだ小さいから、あなたがいないと寂しいでしょう」
高野さんは紗里の息子で、今年まだ2歳、ちょうどお母さんに一番甘えたい時期だった。
紗里も息子に会いたかったが、祖母の世話を従妹一人に任せたくなかった。
「家には和喜夫がいるから、高野の面倒は見てくれるわ。私はここであなたと一緒におばあちゃんの世話をするわ。小さい頃、おばあちゃんはあんなに私を可愛がってくれたんだから、今こそ孝行する時よ。追い返さないで、そうしないと私も辛いわ」
美智はため息をついた。従姉妹が孝行したいと思うなら、確かに帰らせるべきではなかった。
従姉妹がいてくれるのも良かった。そうでなければ、祖母のこの姿を見るたびに泣きたくなってしまう。