第216章 不運な小悪党

メッセージを送り終えると、武田香織は返信がないのを見て、諦めきれずにさらに二つ続けて送った。

「お義姉さんが、あなたの車がとても役に立ったって言ってたわ。ちょうどいいタイミングだったみたい。彼女、とても感謝してるわ。運転してるところ、本当にかっこよかったわよ。警察署に見に行かない?」

「おばあちゃんから聞いたんだけど、お義姉さんがおばあちゃんのおばあちゃんを治したんですって。青木氏病院の専門医よりも凄いらしいわ。家学淵源で、天賦の才能があるんだって。こんなに凄い奥さん、ちゃんとつかまえておかなくていいの?警察署にはかっこよくて正義感あふれる警官がたくさんいるわよ。もしかしたら…」

香織は自分が偶然にも的を射ていたことを知らなかった。武田直樹は最後の一文を見て、以前のあの李という名の刑事のことを思い出した。

今回の暴行事件もちょうどその刑事に移管されたところだった。

「徹、車を用意してくれ」

「武田社長、あとで会議が—」

「キャンセルだ。警察署に行く」

「かしこまりました」

黒いマイバッハはすぐに森田グループの本社ビルを出発し、警察署へと向かった。

しかし、目的地に到着する前に、警察署からそう遠くないところで美智を見かけた。

彼女のアメジストカラーのポルシェが路肩に停車しており、彼女自身は数人の不良風の男たちに囲まれていた。

徹は急いでブレーキを踏んだ。「社長?」

「降りろ。様子を見に行くぞ」

しかし、彼らがドアを開けて足を踏み出す前に、美智を囲んでいた五人の不良たちが一斉に倒れるのを目撃した。

アシスタントは唖然とした。「社長、若奥様は…私たちの助けが必要なさそうですね?あの不良たちはどうやって倒れたんでしょう?」

直樹は眉をひそめた。彼もどうやってあの連中が倒れたのか理解できなかった。

美智はすでに無表情で車に乗り込み、彼らの前を通り過ぎて警察署へと直行した。

直樹は依然として地面に倒れている不良たちを見て、車を降り、近づいていった。

一瞥した後、彼はしゃがみ込み、一人の不良の体から銀の針を抜いた。

その不良はすぐに叫んだ。「勝手に抜くなよ!痛ぇじゃねぇか!」

彼は叫んだ後、目の前の男性がどこかで見たことがあると気づいた。有名人?

違う、森田グループの武田直樹だ!