第258章 陸直樹の審美眼

橋本海東は今年四十代だが、見た目は三十代くらいにしか見えず、顔にはシワひとつなく、髪も黒々と豊かだった。

彼はかなり背が高く、体型も維持が良く、容姿も非常にハンサムで、人の世話をするときは細部まで気を配り、優しい男性の雰囲気を漂わせていた。

内情を知らない人が彼を見れば、内も外も腐り切ったクズ男だとは絶対に想像できないだろう。

クズ男であればあるほど、欺瞞性が高いものだ。

海東が女性をあやすときには、自分の尊厳を泥の中に踏みにじることもできる。普通の男性が百年修行しても彼にはかなわないだろう。

この食事が終わるころには、海東は五百万円の融資を獲得することに成功していた。

彼はまだ不満だったが、武田奥さんがあまりにもケチだと感じながらも、興奮した表情を装い、感謝の気持ちで武田奥さんの手を握り、絶え間なくお世辞を言い、何度も感謝の言葉を述べた。

武田奥さんはそれを楽しんでいた。彼女はゆっくりと自分の手を引き、顎を上げ、青木佳織を連れて立ち去った。

彼女が出て行くやいなや、海東の表情は一変した。

彼は陰鬱な表情で車を運転して家に帰った。

自分の口座に増えた五百万円を見て、腹立たしげに罵った。「あの老いぼれは本当に騙しにくい。あんなに熱心に彼女に仕えたのに、たった五百万円しかくれないなんて!物乞いにでも施しているつもりか!」

橋本櫻子たちは彼の別荘にまだ住んでいて、彼がそう言うのを聞いて、みんな寄ってきた。

「おじさん、どうしたの?誰のことを言ってるの?五百万円でも十分多いじゃない?私たちの村の人は一生かけても五百万円稼げないわよ!」

海東は彼女たちを見て、不機嫌そうに言った。「お前たちに何がわかる。都会では五百万円じゃ何もできない。武田家はあんなに金持ちなのに、武田奥さんは本当にケチだ。少なくとも千万円くれてこそ話になるというものだ!」

櫻子は彼が怒っているのを見て、急いで慰めた。「おじさんの言う通りです。あの武田奥さんがケチすぎるんです。おじさんは彼女にとって一番親しい親戚なのに、千万円どころか、二千万、三千万円だって出すべきですよ。」

海東は非常に同意して頷いた。「そうだ!」