小山星河は振り向いて、手を伸ばし、後部座席に置かれた大きなお菓子の袋を取り上げ、膝の上に置いて開けた。
子供が好きそうなチョコレート、グミ、歯固めビスケット、QQキャンディ、ポテトチップスなどが入っているのを見て、星河は口元を引きつらせた。
鈴木瑠璃は顔いっぱいに優しい笑みを浮かべ、まるで子供を甘やかすような口調で言った。「お姉さんが特別に選んだのよ。気に入った?」
星河は骨ばった手を伸ばし、ポテトチップスの袋を一つ開け、一枚つまんで口に入れた。頭を下げて目の奥の笑みを隠しながら、「まあまあ」と答えた。
この小姉さん、なかなか面白いな。
レストランに着くと、瑠璃は鍵をバレーパーキングのスタッフに渡し、星河を連れて中に入った。
静かな個室に座ると、瑠璃はリラックスして、バッグを置き、だらりとした態度で言った。「好きなものを注文してね」
星河は身を乗り出してメニューを引き寄せ、適当に目を通した。
突然、柔らかい手が彼の頭に置かれ、優しく髪を撫でた。瑠璃が彼の前に立ち、「お姉さんちょっと出かけてくるから、勝手に出歩かないでね?」と言った。
星河の瞳が一瞬止まり、ゆっくりと顔を上げると、瑠璃の美しい顔に、まるで自分の母親よりも慈愛に満ちた表情が見えた。
瑠璃が個室を出て行くのを見つめながら、星河はメニューを持ったまま、無言で笑い始め、肩が小刻みに震えた。
少年の美しい瞳には、こらえきれない笑みが浮かんでいた。
…
二人が食事を終えてレストランを出ると、丁野遥が車を運転して遅れてやってきた。
会うなり、遥は瑠璃を脇に引っ張って、「瑠璃、ありがとう。弟が迷惑かけなかった?」と尋ねた。
「全然。この子、とても素直よ」瑠璃は星河を一瞥した。
少年は再びイヤホンを装着し、両手をポケットに突っ込んで道端に立っていた。漆黒の髪が風に揺れ、街の喧騒を無関心そうに眺めている様子だった。
「よかった。暴れたりしないか心配だったの」遥は安心して、にこにこしながら瑠璃の肘をつついた。「弟、かっこいいでしょ?今年芸術の試験を受けて、芸能界で頑張りたいって言ってるの。母さんも止められなくて…」
芸能界?