鈴木瑠璃は車を運転し、15分で海鮮市場の近くまで飛ばした。
車から降りるとすぐに、犬の鳴き声が聞こえてきた。
瑠璃の心が締め付けられ、その音を頼りに足早に前へ進んだ。
島井凛音は幼い頃に狂犬に噛まれたことがあり、それ以来犬に対してトラウマを抱いていた。今どうなっているのだろう……
人気のない住宅街の小さな路地に着くと、犬の鳴き声がより鮮明に聞こえてきた。
瑠璃はバッグから黒い伸縮式の護身用短棒を取り出し、2メートルまで伸ばして手に握り、勇気を奮い立たせた。
狭い行き止まりの路地で、女性のハイヒールが地面を叩く音が優雅でリズミカルに響いていた。
凛音は壁に寄りかかって座り込み、柔らかな髪を膝に埋めていた。
聞き慣れた足音を聞いて、彼は真っ赤な目を上げた。「姉さん……」
目の前にいた毛が絡まった三匹の野良犬が警戒し、振り返って瑠璃に向かって突進してきた。
「姉さん!」凛音の潤んだ目が突然丸く見開かれ、素早く立ち上がると、足を引きずりながら彼女を守るために駆け寄った。
瑠璃も内心では犬が少し怖かったが、三匹の犬が獰猛に唸りながら彼女に向かって飛びかかってくるのを見て、右足を一歩後ろに引き、手の棒を勢いよく振り回した。
怖気づいてはいけない、勝負は気迫だ!
ヒューヒューという空気を切る音が響き、棒は地面に強く打ち付けられて二度跳ねた。三匹の犬は恐れて二歩後退し、素早く路地の出口へと逃げ出した。
まるでアテナ女神のように権杖を持って優雅に現れた瑠璃を見て、凛音は涙を流した。「うぅ、姉さん……僕、犬に噛まれたよ、すごく痛い!」
瑠璃は自分が乞食組織の帮主・洪七公が持つ打狗棒を振るっているようだと感じ、素早く棒を収納した。
「噛まれたの?どこを?すぐに注射を打たないと!」瑠璃は眉をひそめた。
凛音はもごもごと言いながら言いたがらず、端正な頬が薄紅色に染まった。「僕……行きたくない」
瑠璃の視線は彼を頭からつま先まで見渡し、少年の突き出た特定の部分で止まった。「お尻?」
凛音は恥ずかしさと怒りのツボを突かれ、叫んだ。「姉さん!!姉さん!!まさか——」
「まさか何?」女性は意地悪く笑い、指先で彼の鼻先をつついた。
「凛音は私に知られたくないの?それじゃダメよ、注射は絶対に必要なんだから」