第232章 甘えん坊の男が一番モテる

うわっ!この年頃の弟は、本当に……血気盛んで、ちょっと挑発すると爆発するんだな……

ここは病院だぞ!

「起きなさい」鈴木瑠璃は彼を睨みつけた。

「怖くなった?」小山星河は彼女の顎を掴み、息を殺して笑いながら、かすれた声で尋ねた。「フライドチキンの味のキスがほしいんじゃなかったの?ん?」

そのとき、ドアノブが回る音が聞こえた。

瑠璃は全力で彼を横に押しのけ、転がるようにベッドから飛び降り、落ち着いた様子で服を整えた。

星河は「……」

「星河!」白石塵が勢いよく部屋に飛び込んできた。

突然、病室内の瑠璃を見つけ、そわそわしていた塵はぎこちなく落ち着いた態度に切り替え、前に突進する足を無理やり止めた。

「鈴木社長、あなたも星河を見舞いに来たんですか?」

一秒前まで跳ね回っていた単純バカが、次の瞬間には彼女の前で大人ぶっている様子を見て、瑠璃は片方の眉を上げた。「私の前では演技しなくていいわよ!」

毎日偽りの人格を維持するのは疲れないのか?

塵は「えっと……」

なぜか鈴木社長の嫌そうな口調が、一瞬だけとても懐かしく感じた。

そんなことを考えている暇はなく、塵はベッドの上の少年に目を向けた。

「星河、言っただろ、そんなにハードにトレーニングしたら体が持たないって。ほら、倒れちゃったじゃないか!」

塵がぶつぶつ言っていると、突然星河の陰鬱で不機嫌な視線に気づき、すぐに怯えて声が小さくなっていった。

また何かでこの支配者を怒らせてしまったのか?

この表情を見てみろ、まるで欲求不満みたいじゃないか!

塵の視線が無意識に横の食事容器に落ち、目が一気に輝いた。

おお!これは何これは何?

オリジナルチキン!オーリンズ風チキンウィング!きのこと鶏肉のお粥!

彼らのような体型管理に気を使うアーティストは、フライドチキンの喜びを味わうことができない運命にあった。ましてや上司の前では。

塵は悲しげに目を逸らそうとしたが、目はまたケンタッキーの袋に引き寄せられた。

瑠璃は口角を引きつらせながら、顎をちょっと上げて合図した。「食べたいなら取りなさい」

塵は「いいんですか?」

まるで皇帝の恩赦を得たかのように、塵の美しい手が罪深いチキンレッグに伸びたが、星河に先を越されて袋を押さえられた。