第273章 なんてこった、美少年だ!

洗面台まで歩いて行き、水道の蛇口をひねると、花田玲は肩を落として、手に水をすくって顔にかけた。

クレンジングオイルを二回押し出し、丁寧に顔のメイクを落としていく。

鈴木瑠璃はリンゴを一口かじりながら、リビングでサッカーの試合を見ていた。

階段からドタドタと足音が聞こえてきた。とても乱雑で、まるで二人の少年が押し合いへし合いしているようだった。

「二人とも、何してるの?」瑠璃は声をかけた。

「んんん……んんんん!」

階上から聞こえてきたのは、はっきりしない声だった。まるで玲の口が塞がれて話せないようだった。

瑠璃はリンゴをかじりながら階段を上がっていった。「喧嘩してるの?」

「ドン」という音とともに、玲が階段から転がり落ちてきた。ようやく息ができるようになり、「お姉さん、彼が僕にお姉さんに会わせないようにして、口まで塞いだんだ!はぁ、息が詰まるところだった……」

瑠璃が下を向くと、白く痩せた柔らかな少年が彼女の足元に転がっていた。島井凛音のパジャマを着て、腰に手を当てながら立ち上がった。

玲の顔をはっきり見た瞬間、瑠璃の手から半分かじったリンゴが階段に落ちた。

「うわぁ……美少年じゃない!」

美少年という表現でさえ物足りないほどだった。玲は眉目秀麗で、少し長めの髪を後ろで小さく束ねていた。数本の髪が顔の横に垂れ、目は生き生きとして輝いていた。

目尻がやや上がり、下まぶたは生まれつき赤みを帯びていた。色気のある顔立ちなのに、笑うと無邪気な様子だった。

水を飲んだばかりのようで、少年の美しい唇には透明な水滴が光り、小さな舌でそれを舐めた。

瑠璃は突然自分の失態に気づき、「ゴホン、こんな顔だったのね!」

凛音は頬を膨らませて上の方に立ち、手すりに置いた手をだんだんと強く握りしめ、心の中で不安になっていた。

こいつ……こんなにイケメンだったなんて!

自分だって負けてはいないが、お姉さんとこんなに長く暮らしていると、多少の視覚疲労はあるものだ。

玲は凛音とほぼ同じ背丈で、うつむいて恥ずかしそうに瑠璃を見た。「お姉さん、僕のこの顔、合格ですか?」

彼は金持ちのお姉さんが人を選ぶ基準は顔の良さではないかと疑っていた。

「もちろん合格よ!」瑠璃は惜しみなく褒めた。

ただ、この子の目つきがなんだか変じゃない?