花田玲はにこにこ笑って、「もちろん、やるつもりよ——」
次の瞬間、島井凛音は素早く立ち上がり、花田玲の恥知らずな口をぴったりと押さえつけ、引きずるようにして彼を外へ連れ出した。
やってやる!!
…
花田玲という弟が来たことで、鈴木瑠璃は楽しすぎて仕事のことなど考えられなくなっていた。
9時前に会社に到着し、給湯室に向かう途中、数人の幹部が話しているのが聞こえてきた。
「木村社長の体調がずっとよくないみたいね。この前なんか、会議室で胸を押さえて倒れ込んでいるのを見たわ。額には汗びっしょりだったわよ!」
「手術の後遺症じゃないかしら!今日は出社してないわよ!」
瑠璃は足を止めた。木村佑が出社していない?
ボスは仕事中毒なのに。目の前で泰山が崩れても、彼にとっては仕事の方が大事なはずだ。
よほど体調が悪くなったのだろう。
瑠璃は少し考え込んだ後、お茶を持ってオフィスに戻り、佑にメッセージを送った。
[ボス!今日はどうして出社されないんですか?お体の具合はいかがですか?]
1分もしないうちに、佑から返信が来た。
木村萌:[あまり良くないんだ。瑠璃、私のデスクの上にとても重要な書類があるんだけど、家まで持ってきてくれないかな?]
えっと……佑の家に行くの?
瑠璃はどこか違和感を覚えた。なぜ秘書に頼まないのだろう?
社長室に入ると、瑠璃はすぐにデスクの上の書類に目を留めた。それは南アジアのある工事プロジェクトの入札書類だった……
噂によると、陸田グループも最近このプロジェクトを狙っているらしい。陸田グループと木村勝は入札の有力候補だった。
そして南アジア側の新しい開発業者候補は、木村勝と陸田グループの提示額のほぼ2倍の価格を提示していた。
お金に困らない大富豪——陸田子墨からの提案だ。
瑠璃は思わず笑みを浮かべた。木村萌は彼女に何かを暗示しているのだろうか?
車を走らせて桃花峪にある佑の家に向かった瑠璃は、車の中で突然見覚えのあるシルエットを目にした。
島井晚子、彼女の養母が、一等地の高級住宅街から男性の腕を組んで出てきたのだ!
養父の鈴木敬はまだ刑務所にいるというのに、彼女はもうすでに新しい恋人を見つけたのか?
瑠璃は晚子が高級車に乗り込むのを見送りながら、顔を出して警備員に尋ねた。「お兄さん、あの車は誰のものですか?」